超伝導と相転移
わたしたちの班で扱う「超伝導」という言葉は、物理の現象の中では比較的よく知られている部類に入るかもしれません。超伝導とは主に金属や合金を冷やしていくと、ある温度で急に抵抗がゼロになるという不思議な現象です。すると、ひとたび電流が流れれば永久に電流が流れるので、例えばリニアモーターカーの電磁石に使われているということを聞いたことのある方も多いでしょう。
超伝導はまた、物理の言葉では「相転移」という現象になります。相転移というのはあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、実はわたしたちが普段からよく目にしている現象です。例えば、コップに入れた水を冷凍庫に入れて冷やしていくとどうなるでしょう?しばらくしてから取り出すと、それまでは液体だった水が固まって氷になってでてきます。水と氷はどちらも水分子がたくさん集まって出来ているのに、温度によってまったく異なる見た目になるのです。このように、もともとの物質を構成しているものは同じなのに、温度や圧力を変化させると、ある点を境に物質全体で見たときの振る舞いが大きく変わる現象のことを相転移といいます。
「マクロな量子状態」
相転移が生じる前と後では一体どんな違いがあるのでしょうか。まずは水と氷の例を見てみましょう。室温で液体のときには、水分子は互いに位置を入れ替えたりしながら自由に動き回ることができます。温度を下げていくと、氷点において、それまでは自由に動いていた水分子が規則正しく並んだ構造をとるようになり、その結果かたい固体になるわけです。では、超伝導体の場合にはどんな変化があるのでしょうか?
超伝導体の場合は、電気の伝達を担っている電子の振る舞い方が、相転移を起こす前と後で大きく異なってきます。簡単に説明すると、超伝導でない状態では、電子は物質中をバラバラに動き回っていますが、超伝導になると不思議なことに、今までバラバラに動き回っていた電子が「クーパー対」というペアを作るようになり、そのクーパー対がすべて動きを揃えた状態になってしまうのです。そのような状態では、物質の中の全ての電子(クーパー対)を一つの大きな「波」として捉えることができるようになります。これを、「マクロな量子状態」といって、ミクロな世界の量子力学の現象が私たちの目でも見えるくらいのサイズで生じるのです。
このような相転移が起きることで、超伝導体では電気抵抗がゼロになる以外にも、豊かな面白い現象を示すのです。例えば、相転移の結果超伝導体の中には磁力線が入ることができなくなってしまいます。これは、マイスナー効果と呼ばれます。これによって、磁石を超伝導体の上に近づけるとその磁石が浮いたりするのです。
他にも、ジョセフソン効果という現象があります。超伝導体をふたつ用意して、それらを超伝導を示さない薄い膜を介して繋げます。すると、それぞれの超伝導体の「波」のゆれ方の違いに応じた電流が勝手に流れるのです。これは、超伝導体がマクロな量子状態になっているために生じる現象になっています。
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