何もない
「真空」という言葉をご存知でしょうか。身近な例でいえば、水筒などに使われている魔法瓶が挙げられます。魔法瓶は、「真空」を利用して、その中身の温度を一定に保つことが出来る便利な道具です。あるいは自然科学に興味がある方なら、「宇宙は真空である。宇宙に飛び出してしまうと呼吸が出来なくなり窒息してしまう」などということも知っているのではないでしょうか。
「真空」について辞書を引いてみると、大気圧よりも圧力が低い状態、という意味があることがわかります。圧力が低いとは、要するに空気が薄いということです。空気が薄いと、熱が非常に伝わりにくくなります。ですから、魔法瓶は中身の温度を一定に保つことが出来ます。宇宙では、更に空気が薄い状態になっています。ですから、宇宙では呼吸が出来ないのです。
しかし、「真空」にはもっと抽象的な意味もあります。それは、「何もない」というものです。「机の上に何もものが乗っていない」、「冷蔵庫の中に食べるものが何もない」のように使われる「何もない」とは全く異なります。「真空」が意味する「何もない」は、物が、物質が、原子1個さえもその空間に存在していない状態を指すのです。
何もないと思っていたのに……
何もない状態を指す「真空」は、物理の世界でもよく登場します。物理の世界では、数学を使って物事を考えます。「真空」という状態もまた、数式を使って定義されています。
何もない状態としてちゃんと定義された「真空」ですが、詳しく調べているうちに、不可思議なことがわかってきました。それは、小さな小さな世界でのお話です。極小の世界では、何もないと定義したはずの「真空」が、実は何もない状態ではないということが判明したのです。
何もないはずなのに何もない状態ではない、何とも不思議なこの「微小世界の真空」では、想像もつかない現象がたくさん起きていると考えられています。そのうちの一つが、私たち真空ゆらぎ班がとらえようとしているカシミール効果です。
五月祭当日は、このカシミール効果の説明に加え、どのようにしてそれをとらえるのか、実験の方法についてもご紹介する予定です。また、実際に実験で用いた装置の展示も行います。皆様のご来場を心待ちにしております。
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