こんにちは。今回は3回目の透明マント班の記事になります。
前回の記事では、リング状の物体を用いて、普通のガラスと透明マントの違いを、数値シミュレーションのアニメーションによって見ていただきました。まずは、それについての復習をしてみましょう。
前回は赤と青の縞々の線を用いて光の進み方について見てみました。それを、よりわかりやすい図で見てみましょう。
これは、真空中で光が進む様子を表しています。それぞれの黄色い線は光線を表していて、矢印の向きに光が進んだんだと考えてください。例えば、暗い部屋の中で懐中電灯を灯すと、光の道筋が見えるかもしれません。あるいは、太陽が燦々と輝く日中にカーテンを閉めると、カーテンの隙間から太陽光線が見えることでしょう。上の図の黄色の線はそれらの光線を表した模式図になっています。
さて、次に、前回の記事で見せた、透明マントを用いた時の光線の模式図を見てみましょう。
リングの形をした透明マントの中には赤色の物体が置いてありますが、周りに置いた透明マントのおかげで、物体に光が当たることはなく、何もない真空中の時と同じように光が進んできたように見えるわけです。リングの中をよく見ていただけるとわかると思いますが、光線はリングに沿って曲がって進んでいるのです。このように曲がった光の経路(光路)を作り出すことによって、透明マントは実現できるのです。
それでは、このように曲がった光路を実現するにはどうしたら良いのでしょうか。
皆さんもよく知っているように、光はまっすぐに進みます。それが自然の摂理なのです。つまり、曲がった光を作り出すことは、一見、自然の摂理に反しなければならないのです。一方で、皆さんは光が「折れ曲がる」現象はよく知っているでしょう。
これは、光の屈折と呼ばれる現象で、屈折率の違う物質中に光が入射するときに起きる現象です。実は、光の屈折は、カメラのレンズやメガネのレンズなど、様々なところで利用されている、とても身近な現象なのです。そしてこの屈折現象を用いることによって透明マントを実現することができるのです。なんだか夢みたいな透明マントの話も、少し身近に感じてきたでしょうか。
それでは最後に、光の屈折現象を用いて透明マントを実現する方法を説明しましょう。先ほどは屈折率の違う2つの領域での光の進み方を見ました。今度は、屈折率の異なる領域を10個用意してみましょう。
10個の領域を進む最中、光は屈折を繰り返します。すると、図のように滑らかに曲がっているように見えてくるのです。さらにこの領域を、100個、1000個、…とどんどん細くしていけば、光の折れ曲り方はどんどん滑らかになっていき、「曲がった」光が実現できてしまうのです。そして、「曲がった」光を作り出すことが、上のような透明マントの実現につながるのです。