PhysicsLab. 2016 BLOG
Category: 超伝導班
こんにちは、今回は超伝導班の更新です。気づいたら五月祭まで1か月切りましたね! どこの班も追い込みをかけて実験や展示の準備を行っているところです。今日は私たち超伝導班の方で今行っている実験について少し紹介したいと思います。webページでの班の内容紹介の方にも少し説明しましたが、超伝導の状態になると、超伝導体の中の全体の電子が一つの大きな"波"のように振る舞うようになって、それによって電気抵抗がゼロになるということ以外にもたくさんの興味深い現象が生じてくるのでした。現在は、その説明文の最後に説明している「ジョセフソン効果」について実験を行っています。

まずここでは少し、ジョセフソン効果について説明を加えておきましょう。ジョセフソン効果は、ふたつの超伝導体を用意してその間を何か超伝導にはならないもので分け隔てた「ジョセフソン接合」というものを作ると、いわばそれぞれの超伝導体の「波」のゆれ方の違いに応じた電流が勝手に流れる、という現象です。「勝手に流れる」というのは、普段電流を流すためには電池や電源などを使って電圧をかけますが、それがジョセフソン接合では電圧をかけなくても「波」のゆれ方の違いを互いに揃えようとして電流が流れるのです! この電流は超伝導状態で生じている電子のペア=「クーパー対」が担っていて、そのクーパー対がふたつの超伝導体の間を隔てている障壁をすり抜ける「トンネル効果」によって流れていると考えられています。ジョセフソン接合自体は応用例も盛んで、それを使用した回路を作ることで精密な磁場の測定や電圧の測定に使われていたりもします。

現在私たちの班の方では、ジョセフソン接合を自分たちの手で作成して効果を見ようとしているところです。実験で使用しているふたつの超伝導体は前回も紹介した高温超伝導体YBCOと、金属の超伝導体であるスズです。両方の超伝導体は厚さがおよそにして、その間を超伝導にならない金の薄い膜で隔てることでジョセフソン接合を作成しています。
…と言葉にしていうのは簡単ですが、実際のところ作成してみると非常に難しいものです。今回の実験でコントロールしているのはナノメートル=1cmのなんと1000万分の1の大きさの世界です。そんな接合をうまく作成するのは、現在も引き続き何度も行っていますが難しく、まだ満足できるような結果は出ていません。果たして五月祭にまで結果が出るでしょうか…? 最終的にどうなったか気になった方は当日ぜひ足を運んでみてください、より詳しく分かりやすい説明も用意してお待ちしております!
2016.04.17. Sun.
Category: BEC班
こんにちは、今回はBEC班の第3回目です。
前回は、極低温で現れる不思議な現象「BEC」を実現するための手法、「レーザー冷却」を紹介しました。今回は私たちBEC班が実際に行っている実験の様子を少し紹介します。

冷やそうとしているのは、ルビジウムと呼ばれる原子の気体です。レーザー冷却で極低温に冷やすだけでなく、それを磁石の力を借りて一点に集めることを目標にしています。このようにレーザーと磁石で冷やして集めるこの方法は、磁気光学トラップ(MOT)と呼ばれています。



上の写真は実験を行っている光学台の上の様子です。たくさんの器具が置かれているのが分かると思いますが、それらはミラーやレンズといった光学機器です。レーザー光源から出たレーザーを途中で様々な調整を行いつつ、ルビジウムがある場所まで光学機器で導いていきます。具体的には、レンズでレーザーの大きさを変えたり、PBSと呼ばれるものでレーザーを2つに分けたりしています。



最終的に上の写真のような場所にたどり着きます。少し見えにくいですが、中心の辺りにガラスのセルがあり、その中にルビジウムの気体が入っています。ここにレーザーが入るように調整します。実際には、銅線を円形に巻いたコイル2つを、セルを挟むように置き、磁石の力も生み出せるようにしておきます。磁石の力を発生させていないときでもセル内にレーザーの明かりは見えますが、コイルのスイッチを入れると、ボオッとひときわ明るい光を放つ球が現れます。その輝きを放つのが、極低温まで冷やされたルビジウム原子なのです。まだBECには及びませんが、それでも絶対零度からおよそ0.0001℃上という、とてつもなく低い温度になっています。

今はBECにもつなげやすいMOTのやり方に挑戦しています。当日は実際のMOTの動画などもお見せできると思いますのでお楽しみに!
今回のブログ記事は、少し物理のお話から離れたものです。内容は「フィードバック」について。フィードバックは、現代の科学技術で沢山の応用がなされています。もちろん、私たち真空ゆらぎ班が行っている実験も、フィードバック技術を利用していますヨ!
それでは、具体例を通して、フィードバックとは一体どういうものなのか説明していきましょう。

日本の道路の速度制限は何km/hかご存知ですか? 道路標識などによって指示がなければ、普通60km/hです。これ以上速く自動車を運転するとスピード違反になってしまいます。ですが、スピード違反が怖いからといって、ノロノロ運転をしているようでは時間が余計にかかって仕方ありません。なるべく60km/hの同じ速さで運転したいところですね。


そうはいっても、同じ速さで運転をするというのは案外難しいことだったりします。道路を進んでいると、上り坂だったり下り坂だったりで、自動車の速さが変わってしまったりするからです。


そこで、なるべく60km/hのまま走り続けるように、自動車の速さに応じてアクセルを調節したりブレーキを踏んだりするわけです。これこそが、「フィードバック」です。


もう少し抽象的な言い方をすれば、フィードバックとは、ある系の状態に対して出力される信号に応じた、適当な入力を対象にしてやることで、系の出力を制御すること。
言葉では単純ですが、案外難しいのがフィードバック。失敗すると悲惨なことになります。


初めは60km/hで走っていた自動車ですが、何らかの原因によって少し速さが遅くなってしまいました。60km/hに速さを保つため、アクセルを踏み込み加速します。ですが、あまりにも大きく加速してしまったため、60km/hが目標だったはずなのに、70km/hまで速さが上がってしまいました。


これは大変です!スピード違反で捕まってしまいます。慌ててブレーキを踏み、速さが60km/hになるよう減速を試みました。しかし、慌てていたため予想よりも減速してしまい、今度は60km/hを下回る50km/hまで速さが落ちてしまいました。


これではフィードバックの意味がありませんね。自動車の速さに応じて、上手くコントロールしないと目標の60km/hには届きません。こういった状態を発振するなどといいます。発振せずに、安定なフィードバックを行うことが大切なのです。

フィードバックについて、理解していただけたでしょうか。
五月祭当日は、実際に私たちの実験装置に利用されているフィードバックのお話も予定しています! 5/14、5/15は是非五月祭 PhysicsLab. 2016へ!
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