物理学は自然の真理を探求する学問です。物理学は素粒子から宇宙まで様々なスケールの世界に挑み、それら世界の仕組みを解明し人類の知を押し広げてきました。

このように言うと物理学は私たちの身の回りの生活と関係がないように思えるかもしれません。しかし自然界の基礎を解明する物理学は私たちの生活を豊かにする技術の基礎になっています。例えばスマートフォンなどに使われている半導体の基礎には量子力学があり、またGPSは一般相対性理論が無ければ使い物になりません。一方で理学たる物理学は常に応用を考えているわけではなく、むしろ純粋な興味関心によって発展する学問です。例えば電磁波を発見したヘルツはその成果について「何の役にも立たない」と発言したと言われています。しかし電磁波は現在無線通信に利用され、現代の生活になくてはならない存在になっています。ニュートリノや重力波などの基礎研究の展望は第一線に立つ物理学者にも予想し難いものです。また物理学は思想や哲学にも影響を与えます。地動説を唱えたガリレイはカトリック教会から異端の判決を受けましたが現在は地動説が広く受け入れられており、またアインシュタインによって時空は相対的なものと認識されるようになりました。

ここまで来て、物理学は身近な存在なのか若しくはやはり遠い存在なのかわかりにくくなってきました。身近ではあるが意識しないと存在を感じない、という感じでしょうか。ともかく、少しでも物理学に興味関心を持った方はぜひ“Physics Lab. 2021”を覗いてみてください。純粋な興味関心は世界を広げる出発点です。

Physics Lab. 2021 統括
山本 航輝