副統括挨拶
はじめまして。本団体の副統括を務めます、東京大学理学部物理学科3年のjohn T.です。私はこの役職を場を整える役割と考えています。普段の団体内のゼミ活動のみならず、本企画Advent Calendarや来年5月予定の学祭といった団体外へ発信する企画が円滑に行えるよう尽力いたしますので、是非ご参加ください。そして、楽しんでいただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします。
堅い挨拶はこの辺にして、もう少し気楽に記事を書きます。挨拶の通り、運営らしい裏方の仕事[1]が主ではありますが、「物理が面白い!」ことを共有したい1人の参加者でもあります。本記事では運営として、本団体企画の参加者方が属する場、東京大学理学部物理学科[2]を紹介しますが、私の参加者としての記事は後日公開する[3]予定です。
学科紹介
東京大学は「進学選択」と呼ばれる制度があり、前期の約1年半を入学した際の6つのコース(科類)のカリキュラムに基づき過ごし、2年生後半から理学部物理学科に進学した方が多く集まる集団が私たちとなります。したがって、学科同期の方々とは知り合って1年程になります。
基本情報
学生数は1学年70名。カリキュラムは量子力学、電磁気学、統計力学とそれらの演習が主な必修に加え、座学の選択科目、3年生は学生実験、4年生は各々の研究室での活動となっています。
詳細は学部カリキュラム公式ページをご覧ください。
理物同期の紹介
物理はその「物の理解」と書くだけあり、非常に多様な分野やスケールで日々研究が行われています。このスケールは、ブラックホールといった「巨大な」現象から、日常に見る(かもしれない)物質の電気伝導や磁性といった性質の解明、物質を構成する最小単位である素粒子といった「微小な」現象までと幅広いものです。さらには、情報物理や機械学習と物理を合わせた学習物理学といった新学術領域もあります。
それぞれの研究対象に対して、数値シミュレーションを含む理論予測の検証実験や理論の予言しない現象の探究、実験結果を説明する理論構築、より一般的な理論の基礎づけ・数学的構造の解明と、アプローチの仕方もまた多様となっています。
「これまで先人が築き上げてきた巨大な学問体系に、自分なりの小さいかもしれませんが新しい一歩を付け加えるところに喜び」[4]を見つけるべく、自分の興味のある分野が決まり始めた時期の理物同期にアンケートをとってみました。
理物同期へのアンケート結果
40名の方からアンケートへの回答をいただきました。アンケート結果と随時補足説明をします。※あくまでこの代の傾向です。参考までにお願いします。
Q1. 出身地はどこですか?
結果は……
1位東京都(11名)、2位埼玉県(5名)、 3位神奈川県(4名)。他各県2名以下。
回答の半数がこの3都県に集中し、関東出身の方は62.5%になります。全体の合格者の都道府県別割合からすると若干多いような気がします。他、中部地方から5名、近畿地方、四国地方、北海道東北地方のそれぞれ3名、九州1名となりました。[5]
Q2. 物理は好きですか?(選択式)
結果は…… 進学選択が終わり、理学部物理学科としての講義を1年受けた結果、気持ちにゆらぎが生じるかと思い、聞きました。そのようなことは無さそうですね。中には、物理の特定分野が特に好きになったという変化があるようです。
Q3. 今の志望は理論or実験?(自由記述可、選択式)
結果は…… 大学院へ進むことを考えたとき、出願はこのどちらを選択するかが1つの大きな決断になります。そのため、未定や慎重に吟味している方が多くなる印象です。20年そこそこ生きてきた人生で理論学習に充てた時間が多いため、理論の研究に興味が向くのも自然です。しかし、理論に進む人の中にはかなりこだわりが強く、絶対理論に行きたい!というアツい気持ちを抱えた方がいたりします。[6]
Q4. 最も興味のある分野は?(自由記述可、複数回答可選択式)
結果は…… 1位素粒子・原子核(16名)、2位宇宙線・宇宙物理(13名)、 3位物性物理(11名)、4位未定(6名)。 その他の結果は、量子情報(4名)、ソフトマター・化学・生物物理(4名)、計算物理(1名)。 自由記述欄には、統計物理(3名)、量子基礎論・一般確率論(1名)、量子重力(1名)
素粒子論的宇宙論といった、複数選択などが想定されたり、物性物理が各分野(光物性、半導体、磁性体、超伝導)を総計したりしたため、この3つが現時点で、興味の主な区分です。その他、自由記述欄に統計物理が挙がり、選択肢として新たに設けるとまた違った結果になるでしょう。
Q5. 進振りで迷った学科(記述式)
1位工学部物理工学科(8名)、2位教養学部統合自然科学科数理自然科学コース・理学部天文学科(5名)、4位理学部数学科・地球惑星物理学科・工学部航空宇宙工学科(3名)。 その他の結果は、理学部情報科学科・化学科、工学部電気電子工学科・電子情報工学科・計数工学科、文学部C群東洋史学専修・H群心理学専修・教養学部教養学科超域文化科学分科文化人類学コースが1,2名投票されました。
中には、「迷わなかった」という回答(5名)がありました。進学選択の時点で物理を得意としていることに起因した迷いが多そうです。
Q6. おすすめの教科書・参考書
複数の投票があった教科書・参考書を太字で表します。
・数学・数理物理学
松坂和夫 (2018)「集合・位相入門」岩波書店
中原幹夫 (2018)「理論物理学のための幾何学とトポロジー」日本評論社
ダニエル・フライシュ (2013)「物理のためのベクトルとテンソル」岩波書店
・解析力学
畑浩之 (2014)「解析力学」東京図書
・電磁気学
砂川重信 (1999)「理論電磁気学」紀伊國屋書店
・熱力学
清水明 (2021)「熱力学の基礎」東京大学出版会
田崎晴明 (2000)「熱力学」培風館
・統計力学
田崎晴明 (2008)「統計力学」培風館
キャレン (1998)「熱力学および統計物理入門」吉岡書店
久保亮五 (1998)「大学演習 熱学・統計力学」裳華房
ランダウ リフシッツ (1980)「統計物理学」岩波書店
戸田盛和・市村 純 (2020)「例解 熱・統計力学演習」岩波書店
高橋和孝・西森秀稔 (2017)「相転移・臨界現象とくりこみ群」丸善出版
・量子力学
清水明 (2004)「量子論の基礎」サイエンス社
J.J.サクライ・ナポリターノ (2022)「現代の量子力学」吉岡書店
猪木慶治・川合光 (1994)「量子力学」講談社
砂川重信 (1991)「量子力学」岩波書店
S.ワインバーグ (2021)「ワインバーグ量子力学講義」筑摩書房
岡崎誠・藤原毅夫 (1983)「演習 量子力学」
・量子情報・量子基礎論
近藤慶一 (2023)「量子力学講義」共立出版
新井朝雄・江沢洋 (1999)「量子力学の数学的構造」朝倉書店
堀田昌寛 (2021)「入門 現代の量子力学」講談社
沙川貴大・上田正仁 (2016)「量子測定と量子制御」サイエンス社
Martin Plávala (2023)`General probabilistic theories: An introduction', Physics Reports, 1033, 1-64,
・場の量子論
坂本眞人 (2014)「場の量子論」裳華房
S.ワインバーグ (1997)「場の量子論」吉岡書店
M.Srednicki (2007)「Quantum Field Theory」Cambridge University Press
・一般相対論・宇宙論
佐藤勝彦 (2021)「相対性理論」岩波書店
須藤靖 (2019)「一般相対論入門」日本評論社
福江純 (2015)「完全独習現代の宇宙物理学」講談社
・その他
シュレーディンガー (2008)「生命とは何か」岩波文庫
東京大学理学部物理学科 (2022)配布資料「物理学実験I解説書」
奥村薫 (2022)「大学入学共通テスト 倫理、政治・経済の点数が面白いほどとれる本」角川出版
インターネット
Q7. その他伝えたいこと(理物の生活tips等)
誰向けなのか分からない質問ではありますが、寄せられた回答の一部を列挙します。
「文学部の授業をとると、面白い。」「3年後期は暇です。なぜなら、3年前半で感覚が ~~ 狂う~~ からです。」「理物はやりたいことが溢れているのでやることの取捨選択が意外と大事です。」「疲れた時は美味しい紅茶を淹れましょう。」「分からない時に「わかりません」と言える能力が一番大事な気がしてますね…。」「周りのレベルが高い人と比べすぎない。タスクが溜まってきたときは、自分の能力不足ではなく、先人が偉大すぎて基礎分野が深掘りされ過ぎてしまったからだと考える。」「厳しくなったら捨てられるものはたくさんある。(物理の理解とか)乗り切ろう!」「周りは優秀な人が多いですが大学院以降で大事になるのは周りを気にせずどれだけ一つのことに打ち込めるかなので、周りと比較するのではなく周りが見えなくなるくらい熱中する人になれるとかっこいいと思います。」「演習はやった方がいいよ。」「レポート・課題は早めにやろう。」「今年のハロウィンは演習の日とかぶっていて、数人で仮装しました!発表する子にポリスの恰好させました!」「周りは優秀な人が多いですが大学院以降で大事になるのは周りを気にせずどれだけ一つのことに打ち込めるかなので、周りと比較するのではなく周りが見えなくなるくらい熱中する人になれるとかっこいいと思います。」
最後に
ここまで読んでいただいたあなたと、記事の作成にあたって協力いただいた同期の皆様に感謝します。また、理物の雰囲気が伝わることを願います。[7]続く12/3以降の記事もよろしくお願いします。
周りの優秀な同期に頼ってばかりなのが現状です… ↩︎
以下理物 ↩︎
この記事を書いている現時点で、記事の内容未定です。 ↩︎
東京大学理学部物理学科進学案内より引用 ↩︎
筆者の私が青森出身なので聞いてみました。余談ですが、地元ネタをするとウケますよ。 ↩︎
本音を(言葉のみオブラートに包むと)「実験の頻度が多く、レポートが(時間や手間の観点で)重く面倒である。」「実験装置や手順が固定されており、データ解析のみばかりでつまらない」等の意見があります。目的のため、実験の設定や検出器、解析方法に至るまでの全てを考案する学生実験は3年までにはなく、現象を観測できること自体の嬉しさを感じにくいことも要因と思います。しかし、これを全員に課すのはカリキュラムは厳しいのでしょう。 ↩︎かなり特徴豊かな方々なので、伝えきれなかったなと思います。伝えきれなかった分は後の記事を是非読んでいただきたいです。 ↩︎