Q&A
皆様から寄せられた質問に物理学科の学生が回答します! 各班の活動内容、学科の生活や雰囲気などお気軽にご投稿ください。
量子班
Q
GPT とは Generative Pre-trained Transformer のことですか?
A
若干の表記揺れはありますが、量子基礎論の分野では通常 GPT といえば General Probabilistic Theories (一般確率論)のことを指します。
数理物理班
Q
進振りで物理学科と数学科で迷っているのですが、物理学科ではどの程度数理的なことができるのでしょうか。また、数学科と比べた物理学科の魅力はなんでしょうか。
A
物理学科のカリキュラムに数理物理的な要素はほとんどありませんし、数学科も同様だと思います。ただしどちらの学科にも数理物理に興味がある人は多くいるので、学生の自主ゼミという形で数理物理を勉強することはできます。全体の傾向としては、数学科では定理・命題の証明を厳密に行っており、物理学科では証明の厳密さにはそこまでこだわらず数学を使って物理を調べているのだと思いますが、具体的なことは数理物理を研究している先生に聞いてみることをおすすめします。
また、物理学科では実験が必修になっていることが魅力だと思います。物理の基礎は実験なので、学部のうちに実験を体験しておくことには価値があるでしょう。
その他
Q
物理学科では学科内での交流はどのくらいあるのでしょうか。
A
物理学科には一学年70人と非常に多くの人が在籍しているため、交流の形は多様ですが、ここではその一部を紹介します。
物理学科には学生控室が二つ用意されており、普段から授業の合間や放課後に集まって交流することができます。談笑はもちろん、ホワイトボードで仲間と議論したり教えあったり、あるいは、ゲームを持ち寄って遊んだりと過ごし方は人それぞれです。教科書や漫画、問題集などの蔵書も豊富です。物理学科には物理が好きという共通点のもとで、得意なことも知っていることも違う多様な人が集まっており、刺激的な毎日を送ることができます。
また、物理学科全体のイベントとして、ニュートン祭やビアパーティーなど、物理学科の学生と教職員が一堂に会して交流するイベントもあります。
その他
Q
物理の謎で解明されて欲しい問題はありますか。あればそれは何ですか。
A
解明されて欲しい謎、ということで、ここでは「万物の理論」と「ミクロ物理学によるマクロ現象の導出」について紹介します。
物理学の対象は、そのスケールによって、ミクロな系とマクロな系に大別することが出来ます。ミクロな系を記述するミクロ物理学の目的は、自然界に存在する4つの相互作用を統一的に記述する、万物の理論を確立することです。このうち、電磁相互作用・弱い相互作用・強い相互作用の3つについては、未解決部分は残るものの、場の量子論によって統一的に記述されつつあります。しかし、残る重力相互作用については、一般相対性理論による古典論の枠組みでの理解にとどまっており、量子論の枠組みで重力相互作用を記述する理論は確立していません。現在、万物の理論の有力な候補として、超弦理論によるモデルがいくつか候補として挙げられています。いつの日か、すべての相互作用を統一的に記述する、即ち、すべての物理現象を説明する万物の理論が完成することを願っています。また、宇宙には標準理論で記述されるような我々が知っている物質と重力以外の相互作用をほとんどしない(あるいは全くしない)ダークマターと呼ばれる物質で溢れていることが知られており、その分布や宇宙の進化における役割は解明されつつありますが、その正体や詳しい性質は未だにわかっていません。ダークマターの正体をつきとめ、通常の物質に加えてダークマターも記述できるように標準理論を改良するか、新しい理論を構築することも、ミクロ物理学および宇宙論における重要な課題です。
一方、マクロ系を記述する理論としては、熱力学が、特に平衡系に関しては完成しています。熱力学は、系のミクロな性質に依存しない強大な枠組みを提供し、理学・工学の諸分野に多分に寄与してきました。ところで、どんなマクロな系も、それを構成する粒子はミクロ物理学の理論である量子力学に従うはずですから、量子力学の知見はマクロ系にも反映されているはずです。しかし、量子力学における時間反転対称性は熱力学においては破れており、外部から手を加えることなく、任意の状態遷移を実現することはできません。ミクロ物理学とマクロ物理学を繋ぐ理論としては統計力学が確立されていますが、統計力学はマクロな物理量をミクロな物理量によって計算する方法を与えるに留まります。いつの日か、マクロ系の特異な振る舞いを、真の意味でミクロ物理学から導く方法が確立されることを願っています。
その他
Q
物理学徒の方々が、自然界が 級の関数やエルミートな作用素で記述出来ると信じている理由はなんですか。
A
物理学では取り扱いのしやすさのために数学的に「良い」性質を仮定することが多々ありますが、これは我々が実験で測定できる精度の範囲ではそれで十分近似できるだろうと考えるからです。しかし、やみくもに「良い」性質を仮定せず、数学的に慎重に扱うことが本質的な場面も多くあります。例えば、相転移というのは、何らかの熱力学関数が解析的ではない、という「悪い」性質を持つことで特徴付けられます。
一方、量子論における物理量を表す作用素の自己共役性のように、理論の「公理」として数学的な性質を要請する場合もあります。ほとんどの物理学者は量子論が正しいことを信じていますが、その真偽は実験によって決められるものであり、そうした基礎理論の公理を「証明」することは原理的に不可能だといえます。
補足ですが、コステリッツ・サウレス転移という、熱力学関数が 級だが解析的ではないような相転移も知られています。時間を物理量のように扱う試みとして、自己共役性こそ達成できないものの、エルミートではある作用素を得られるような枠組みもあります。また、開放量子系の時間発展を非エルミートなハミルトニアンを用いて近似することもあります。
量子班
Q
ゲージ理論とはどのような理論ですか?
また、なぜゲージ理論は異なる相互作用を包括的に記述できるのですか?
A
ゲージ理論は状態の記述に冗長性がある理論です。冗長性があるとローレンツ共変性を明白に保つように理論を作ることができます。また、強い相互作用は漸近的自由性というエネルギーが大きくなると相互作用がない理論に近づく性質がありますが、4次元のくりこみ可能な理論で漸近的自由性を持つのは非可換ゲージ理論だけであるという主張(コールマン・グロスの定理)があります。このため、ゲージ理論で自然が記述されるのはある意味で必然的です。
また、ゲージ理論は古典論の段階では質量がない粒子しか現れませんが、ヒッグス機構というものによって質量がある粒子も記述することができます。これによって、力を媒介する粒子が質量を持つ弱い相互作用もゲージ理論で記述することができます。
その他
Q
残念ながら講演を見にいけなかったのですが、録画等をどこかで見ることはできないでしょうか?
A
学生講演の録画は行っておりません。学生講演の発表スライドは学生講演ページにて公開しておりますので、そちらをご覧ください。