■概要
 1次元電子系という普段出会うことのない物質を取り扱うことで、その奥に潜む物理について考えてみましょう。 この分野の理論的研究はノーベル賞を受賞した朝永にはじまり、Luttingerにより大部分が完成されて、普段見る3次元的な広がりを持つ物質とは異なる性質を持つことが予想されています。 そして、これは高温超伝導体の理解にとって重要なことなどが示唆されており、とても注目され、面白い分野になっています。 現在では、理想的に近い1次元系も実現できるようになり、実験でも1次元系にアプローチできるようになったので、3次元ではありえない物性の研究、発表を通して、来場者の方々にその面白さを伝えたい、と考えています。

       
[fig.1] Sr2CuO3の構造  [fig.2]1次元系の例
赤球がCu、青球がO、  (Single Wall Carbon Nanotube[SWCNT])
灰球がSrを示す。     (*[fig.2]の画像はwikipediaより引用)

■実験
 1次元電子系班では次の2つの実験を行います。
  
  • 銅酸化物(Sr2CuO3)の帯磁率の測定

  •   
  • 1次元量子系の分光測定


  • 以下、それぞれの実験の概略を説明します。

     1:銅酸化物(Sr2CuO3)の帯磁率の測定
      Sr2CuO3は、理論的によく研究されてきたt-Jモデルをよく再現しており、その帯磁率の測定を通してスピン間相互作用の様子をいろいろな実験環境で調べます。

     2:1次元量子系の分光測定
      1次元電子系の多くではスピン・電荷の分離が見られ、スピノンとホロンという準粒子が考えられています。 分光測定により、エネルギースペクトルを調べることで、それら粒子の存在や振る舞いを調べます。