■目的
 宇宙線を検出し,質量を測ることで宇宙線粒子の同定を行います。

■このテーマを選んだ背景
 昨年度のPhysics Lab.2009での宇宙班は,この宇宙線を,小柴先生のノーベル賞で有名なカミオカンデと同じ原理(チェレンコフ光の観測)を用いて検出するという実験を行いました。この時の検出方法では,この粒子の飛跡を知ることはできましたが,この粒子が何という粒子であるか?ということ自体は,この実験からは得られないものでした。

 そこで今年は,この宇宙線の粒子の質量を測ることで,この粒子が何という粒子かを同定することを,実験の目標としました。

実験装置

■実験の内容
 アインシュタインの特殊相対論では,相対論的な粒子の運動量pは,光速c,その粒子の静止質量m,速度vを用いて
    運動量の式 p= mv/√(1-(v/c)^2)
と表されます。このことから,宇宙線の運動量と速度を測定することができれば,質量mを求めることができると言えます。
 そこで私たちは,図のような装置をつくり,運動量と速度を測定しようと考えています。

運動量の測定

 宇宙線が磁場の存在する領域(図中A)に入ると,ローレンツ力を受けて軌道が曲がります。
 そこで,この磁場領域の前後に,粒子の通った位置を検出する装置であるドリフトチェンバー(図中B)を4つ置き,軌道の曲がり具合を調べます。粒子の運動量pは,軌道の回転半径r,磁場の磁束密度B,素電荷e と
  運動量の式 p = eBr
という関係を持つので,軌道の曲がり具合が分かれば,そこから運動量を求めることができます。


速度の測定

 速度の測定では,ある距離を粒子が通過するのに要した時間を測り,単純に距離÷時間という計算によって速度を計算します。
 通った時間を測る装置は,シンチレーターと光電子増倍管と呼ばれるもので,上の図中では C(2ヶ所)で示されています。
 この宇宙線粒子は,光の速さに近い速さで飛んでくるので,この時間差を測るというだけでもひと仕事です。

 以上が宇宙班の行っている実験の概要です。当日は実験の説明に加え,実際に作成した装置も展示する予定です。