PhysicsLab. 2016 BLOG

加速器班の記事

Category: 加速器班
こんにちは、加速器班の二回目です。

前回は、加速器の概要について書かせていただきました。今回は、実際に作るにあったって課題となることを書きたいと思います。加速器の制作に当たって加速機構の設計だけが問題になるわけではありません。加速機構の種類については前回お書きした通りです。

まず、真空についてです。素粒子というのは、多くの場合反応しやすいものです。今回僕らが使おうとしている電子線は別名ベータ線と呼ばれるもので、人間が浴びると有害つまり身体の組織と反応しやす性質を持っています。このため、待機中では空気と反応して目標の素粒子を確認することができません。そこで、空気を抜こう!という話になります。大気圧はだいたい105Paですが、現在最先端の研究では10-9Paまで気圧を下げてしまうこともあります。今回の実験では10-3-10-4Paぐらいの気圧を確保できれば大丈夫です。

次に、イオン源です。素粒子というのは、科学の実験のように電子試薬瓶があるわけではありません。自分たちで作り出す必要があります。電子を作る方法は大きく分けて3つあり、1つめ金属を温める方法、2つめ放電を起こす方法、3つめ光を使う方法があります。今回は1つめの金属を温める方法を用います。具体的には、タングステンのフィラメントに電流を流して熱します。イメージとしては豆電球のような感じです。

今度は、電源です。実験で用いるためには、正確な電圧、電流の値を測定また目標に近づくように調整する必要があります。よって乾電池で代用したりすることは難しいです。また、大きな電圧、大きな電流を流すため専用の装置を使わないと電源が壊れてしまったり、目標の電圧が出なかったりします。

最後は、検出器です。研究の多くは検出器にかかっていると言っても過言ではありません。検出器に多くの影響を与えるのが電磁波ですが、加速器ではこれがたくさん出ます。よって、電磁波に注意して検出器を作らなければなりません。

以上のように、加速器と言いつつ加速機構自体よりも他のところに関する作業が多く、実は大変です。高校の問題で「電子を出せば」、「容器内は真空にした」などと書かれているところが実際に実験するときは大変です。

こういった、器具についても五月祭では展示する予定なので是非ご覧になってください。
2016.02.22. Mon.
Category: 加速器班
はじめまして、加速器班の丸井と申します。

ここでは、加速器班についてお話をしたいと思います。加速器と一言で行っても様々なものがあります。有名なのは、Higgs粒子を発見したCERNや、新しい原子核を発見した理研、物性研究で使われるSpring-8などでしょうか。加速器というのは、荷電粒子を加速する装置の総称です。では、何を加速するのでしょうか、また、どうやって加速しているのでしょうか?

CERNでは、陽子をシンクロトロンを用いて、磁場を変化させ一定の半径で回しながら加速し、陽子と陽子の衝突実験を行っています。理研では、様々な原子核をサイクロトロンを用いて、一定の磁場中で回転運動させながら加速し、新しい原子核を作成しています。Spring-8では、電子をシンクロトロンを用いて加速し、発生する電磁波を使って試料の分析を行っています(レントゲンやMRIみたいな感じだと思ってください)。ここまで、挙げた例は全て回転運動をしています。

今回作成している加速器は、これらとは少し違い、電位差を使って加速する静電加速器と呼ばれるものです。例えば、乾電池の+と−の間には1.5Vの電位差があり、1Cの粒子を1.5J(ジュール)加速することができます。僕たちは、これを使って加速した電子の干渉の様子や磁場中での運動の軌道を調べたいと思っています。20世紀最大の発見の一つに相対論が挙げられます。相対論によれば、粒子の運動が光速に近い時、運動の軌跡がNewton力学とは異なるらしいです。ただ、飛行機などで光速に近い速度を出すのは難しいでしょう。たくさん燃料が必要でしょうし、隕石みたいに空気抵抗で燃えてしまうかもしれません。しかし、とっても小さくて軽い電子ならばどうでしょう? 速度を大きくしてもあまりエネルギーが大きくならず、真空容器の中で実験すれば空気抵抗なども関係ありません。これなら、もしかしたら出来るかもしれません。この班では、電子を大きく加速し光速に近づけると運動の軌跡がNewton力学ではなく相対論に一致することを確かめたいと思っています。
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