PhysicsLab. 2016 BLOG

透明マント班の記事

2016.04.09. Sat.
こんにちは。今回は3回目の透明マント班の記事になります。前回の記事では、リング状の物体を用いて、普通のガラスと透明マントの違いを、数値シミュレーションのアニメーションによって見ていただきました。まずは、それについての復習をしてみましょう。

前回は赤と青の縞々の線を用いて光の進み方について見てみました。それを、よりわかりやすい図で見てみましょう。

これは、真空中で光が進む様子を表しています。それぞれの黄色い線は光線を表していて、矢印の向きに光が進んだんだと考えてください。例えば、暗い部屋の中で懐中電灯を灯すと、光の道筋が見えるかもしれません。あるいは、太陽が燦々と輝く日中にカーテンを閉めると、カーテンの隙間から太陽光線が見えることでしょう。上の図の黄色の線はそれらの光線を表した模式図になっています。

さて、次に、前回の記事で見せた、透明マントを用いた時の光線の模式図を見てみましょう。

リングの形をした透明マントの中には赤色の物体が置いてありますが、周りに置いた透明マントのおかげで、物体に光が当たることはなく、何もない真空中の時と同じように光が進んできたように見えるわけです。リングの中をよく見ていただけるとわかると思いますが、光線はリングに沿って曲がって進んでいるのです。このように曲がった光の経路(光路)を作り出すことによって、透明マントは実現できるのです。

それでは、このように曲がった光路を実現するにはどうしたら良いのでしょうか。

皆さんもよく知っているように、光はまっすぐに進みます。それが自然の摂理なのです。つまり、曲がった光を作り出すことは、一見、自然の摂理に反しなければならないのです。一方で、皆さんは光が「折れ曲がる」現象はよく知っているでしょう。

これは、光の屈折と呼ばれる現象で、屈折率の違う物質中に光が入射するときに起きる現象です。実は、光の屈折は、カメラのレンズやメガネのレンズなど、様々なところで利用されている、とても身近な現象なのです。そしてこの屈折現象を用いることによって透明マントを実現することができるのです。なんだか夢みたいな透明マントの話も、少し身近に感じてきたでしょうか。

それでは最後に、光の屈折現象を用いて透明マントを実現する方法を説明しましょう。先ほどは屈折率の違う2つの領域での光の進み方を見ました。今度は、屈折率の異なる領域を10個用意してみましょう。

10個の領域を進む最中、光は屈折を繰り返します。すると、図のように滑らかに曲がっているように見えてくるのです。さらにこの領域を、100個、1000個、…とどんどん細くしていけば、光の折れ曲り方はどんどん滑らかになっていき、「曲がった」光が実現できてしまうのです。そして、「曲がった」光を作り出すことが、上のような透明マントの実現につながるのです。
こんにちは。今回は透明マント班の2回目のブログになります。前回の投稿で、「何もない状態と同じように見えていれば、何もないと感じ取る訳です。」と書きました。今回は、それについて、実際に行った数値シミュレーションの結果を見ながら考えていきましょう。

そもそも、普段光がどのように進んでいるかを意識したことがある人はあまりいないのではないかと思います。そこで、まずは何もない場所で、光の波がどのように空気中を伝わっていくかのアニメーションを見てみましょう。
vacuume.gif
細かい物理的な説明は省いて、上のアニメーションで、赤と青の縞模様が光を表していると考えてください。上のように、何もない空間では、赤と青の縞模様はかき乱されることなく、まっすぐと左から右へと進んでいきます。

それでは、これと比較して、空気中にリングの形をしたガラスを置いてみましょう。
glass.gif
アニメーションを見てもわかるように、何もない時とでは大きく様子が異なっています。特にガラスリングの右側に注目してください。先ほどはかき乱されることなく真っ直ぐ進んでいた光が、ガラスの存在によってかき乱されているのです。これにより我々は何もない時とガラスがある時の違いに気付くことができ、「そこにガラスがある」と認識するわけです。それでは、ガラスの左側にいる人がガラスを認識できないかというと、そんなことはありません。もう一度アニメーションを注意深く見てみてください。ガラスの左側についても、赤と青の縞模様が波打っているのがわかるはずです。これは、いわゆる「反射」による効果を表しています。やはり、ガラスの存在を認識できるわけです。

最後に、私たち透明マント班が目指す「透明マント」を置いてみましょう。
metamate.gif
これを見ると、先ほどのガラスと同じ形状のものが置いてあるにもかかわらず、リングの右側および左側では、何事もなかったかのように、赤と青の縞模様は乱されることなく真っ直ぐ進んでいるのです。

なぜ、これが透明マントになるのでしょうか。それは、ガラスによって波が乱されているのと違って、リングの右側と左側で「何もない状態と同じ」なので、我々は、「何もないと感じる」からです。また、リングの中心に注目してみると、ガラスを置いた場合のアニメーションでは、光がリングの中心に侵入していますが、透明マントのアニメーションを見ると、リングの真ん中に光は侵入していないのです。このことから、リングの真ん中に何かを置いても、その物体に光が当たることなく、我々はそれを認識できないのです。

簡単な説明でしたが、透明マントの世界、楽しんでいただけたでしょうか。
2016.01.07. Thu.
こんにちは。PhysicsLab. 2016副統括をつとめる高野佑磨と申します。私は副統括と透明マント班の班長を兼任させて頂いております。そこで今回は、班長をつとめる透明マント班の紹介をしていきたいと思います。

誰しもが一度は憧れを抱いたことがあるであろう透明マント。それは、冠ると周りの人から自分の姿が見えなくなるという素晴らしいマントです。私も、その透明マントに憧れを抱いた者のうちのひとりです。そこで、透明マントに関する実験をしたいと言うのがこの班を立ち上げたきっかけでした。

そもそも、「透明」とはどういうことでしょうか。広辞苑第二版補訂版によると

   物体が光をとおすこと。

となっています。これは英語で言うところのtransparentですね。この「透明」には、ガラスや水などが当てはまります。しかし、私たちはガラスや水を認識、「目で見る」ことができますので、「目で見えない」透明マントの性質とは違う訳です。透明マントの「透明」とは、「目で見えない」、英語で言うとinvisibilityを指しているのです。

私たちは普段、経験則から何もなければ見えるであろう状態を予測してものを見ていると考えることができます。ガラスや水を認識できるのは、それらが透明であっても、何もない状態とは見え方が違うからです。これを逆に利用して、何もない状態と同じように見えていれば、何もないと感じ取る訳です。このことを用いたのが透明マントの技術であり、"Cloaking"と呼ばれています。

透明マント班では、"Cloaking"に関する実験の展示を行いたいと考えています。ぜひ、五月祭当日、"Cloaking"の世界を堪能してください。
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