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量子測定班

ミクロな世界

突然ですが、みなさん、身の回りにあるものを思い浮かべてください。何でも構いません。思い浮かべましたか?

次に、その思い浮かべたものを、どんどん分解していってください。例えばりんごを思い浮かべたのなら、りんごを半分に切り、さらにその半分、そのまた半分...という感じで分解していってください。分解できましたか?

途中で分解をやめてしまえば、恐らく薄っぺらいりんごやらなんやらが出来上がったと思います。では、分解を途中でやめずに、際限なく分解していったらどうなるでしょうか?いくらりんごを切っていっても、どんどん薄いりんごができるだけでしょうか。それともどこかで切れなくなってしまうのでしょうか?

このように、物体を細かく切り刻んでいったらどうなるだろうか、という問いを考えたことがある人は、少なくないのではないかと思います。もちろん物体に限らず、例えば光や電気でも構いません。

このような問いに、初めて明確な答えを提示したのが20世紀初頭の物理学でした。

その答えは、物体を細かく分割していくと、どこかで分割できなくなってしまう、という驚くべきものでした。

また、そのようなとても小さなスケールの世界では、われわれが普段使っているルールが成り立たず、どうやら別のルールが成り立っていることが分かりました。では、どのようなルールが成り立っているのか、少し見ていきましょう。

ボールの入った箱があります。外から中のボールは見えないとします。このとき、箱からボールを取り出すことを考えます。取り出したボールが白色だったなら、そのボールを取り出す前の箱の中に入った状態では、何色だったでしょうか。誰も箱の中のボールを見ていませんが、恐らく誰もが白色だったと思うでしょう。一方、取り出したボールが黒色だったなら、箱の中に入っていた状態でも、黒色だったと思うでしょう。

では、仮にものすごく小さな色のついたボールを用意できたとして、上と同じ実験が出来たとしましょう。このとき、どのような結果が得られるでしょうか。今までの経験からすれば、色を見た時に白色なら、もともと白色であったと思うでしょうし、黒色だったらもともと黒色であったと思うでしょう。しかし、現実はそうではありませんでした。実際には、観測した色が白色もしくは黒色でも、もとの状態が必ずしも白色もしくは黒色とは言えず、その両方を重ね合わせた状態、いわば中間の灰色のような状態がゆるされることが分かっています。この重ね合わせ状態のものを取り出すと、ある時は白色、またある時は黒色になることが分かっています。

このような重ね合わせ状態が許されることで、我々の日常では考えられなかったようなことが、ミクロなスケールで生じます。

我々は、このような奇妙なことが生じるためには、ミクロな系では、どのような方程式が成り立っているべきか、ということを考え、その方程式にどのような制限が加えられるべきかを実験から求めていきます。