展示紹介
相転移班
我々の班は物理学の中でも重要な現象である相転移というものについていくつかの実験を行いました。相転移というと聞き覚えがないかもしれませんが、実は皆さんがよくみている現象で相転移にあたるものがあります。コップの中に氷を入れておくと当然溶けて水になってしまいますよね。これは相転移の一種です。逆に水が氷になるのも相転移で、100℃で水が水蒸気になるのも相転移です。つまり、相転移とは温度や圧力など変化することで物質の状態(相)が劇的に変化(転移)する現象のことを言うのです。以下ではそれほど身近では起こらないのですが、興味深い相転移についていくつか説明したいと思います。
磁気相転移
鉄が磁石にくっつくのはご存知だと思いますが、この鉄をある温度約(770℃)まで熱すると磁石にくっつかなくなります。このような相転移を磁気相転移と言います。
超伝導
これは聞いたことがある方も多いと思います。超伝導とは一部の物質を冷やしていくとある温度で電気抵抗が0になり、磁石の作る場をはじくようになる現象です。この現象を応用するとものを浮かせたりすることができ、リニアモーターカーの浮上原理となっています。
超流動
超流動は超伝導と似た現象で、ヘリウムを冷やしていくとある温度で粘性がなくなる現象です。これも色々と不思議なことを起こすのですが、超流動と違い実用性という面ではあまりないかもしれません。ただ面白いです。
五月祭ではこれらの相転移についてもう少し詳しく説明するとともに、いくつかの実験を行う予定です。日常生活では見ることの出来ない不思議な現象を体験できるよう努力いたしますので、ぜひご来場ください!
宇宙班
ブラックホールってどんなもの?
突然ですが、ブラックホールをご存知でしょうか?一度は聞いたことがあるかもしれません。高質量、高密度の天体が重力崩壊して出来るいわば時空の穴で、光でさえもその近くから脱出することが出来ないのでブラックホール(真っ黒な穴)と呼ばれています。 実はこのブラックホール、量子論に基づいて考えると、ホーキング輻射などの理論的に興味深い性質を持つことや、情報喪失問題などの困難を孕んでいることが分かっています。しかし物理学は自然科学ですから、理論的に予言される性質や提案されている困難の解決法がどれだけ魅力的であっても、実験結果と整合しなければ物理学の理論としては意味を持ちません。なのでブラックホールという奇々怪々な代物であっても実験にかけなければいけないのです。
ブラックホールの実験?
さて、実験どうしましょうか。方法はいろいろ考えられますね。望遠鏡でブラックホールを観察する、宇宙船に乗って直接ブラックホールに赴く、はたまた高エネルギー粒子を衝突させて作るなど。望遠鏡の方法に関しては、EHTプロジェクトというものがあり、日夜研究が進展しているところのようです。宇宙船でブラックホールに向かうのは、操縦を誤ってブラックホールに落っこちたら危ないですね。加速器で作る方法は、今の加速器のエネルギーではブラックホールが作れたとしても、あっという間に蒸発してしまって、実験どころではなさそうです。
“擬似”ブラックホールならできる
ブラックホールの実験がどうにも難しそうに見えるのは、ブラックホールは時空の穴という概念に囚われているからだ、と考えましょう。つまり、時空ではなく、何か別の身近で分かりやすいものを用いて、ブラックホールと光の関係を築くことが出来れば実験が可能ではないか、と。
そこで私たち宇宙班は、「時空のゆがみ」と「光」という関係を「水流の流れ」と「水の波」という関係に置き換えることによって、ブラックホールを擬似的に再現することを試みました。具体的には跳水(右の図)という現象を用いることで再現することが出来ます。今は、シュワルツシルド半径に対応しているものが存在することを調べているところです。また、ホーキング輻射の観測の足掛かりになるような実験の可能性も模索しているところです。
重力波の直接観測
また、昨年度のノーベル物理学賞は「重力波の直接観測」に授与されました。このノーベル賞の授与されたLIGOが観測した重力波は連星ブラックホールの合体が起源でした。ブラックホールをテーマにする我々宇宙班が、この偉業に触れないわけにはいきません。重力波の発生からその観測方法(干渉計の原理や、マッチドフィルタ法)についてまで、ご来場の皆様に親しみやすいような説明を用意しております。
生物物理班
どうしてシマウマは縞模様なんだろう。どうして魚にはあんなにいろいろな種類の模様があるんだろう。そんなことを考えたことはありませんか?私たちはそんな動物の模様の不思議に物理学で切り込みました。動物の模様と物理、なんの関係があるのと思われるかもしれないですね。実は大いに関係があるんです。もし動物の模様ができる仕組みを説明できたらワクワクしませんか?
生物の模様がなぜ物理?
生物の模様を物理学で考えるなんて言われてもすぐにはピンときませんよね?そこで、まず生物の模様が物理で考えられるわけをお話したいと思います。
とここでいきなりですが模様当てクイズ!下の図は何の模様でしょうか。
第1問!
では続いて第2問!
次が最後です第3問!
クイズはここまでです。正解は…
どれもコンピュータの模様でした!ごめんなさい。(笑)でもみなさん何らかの動物を思い浮かべたのではないでしょうか。例えば1問目の模様。これはこのキリンみたいだと思いませんか?
2問目はヒョウ。
3問目は珍しい動物ですがユキヒョウの模様とそっくりです。
驚くことはこれらの模様が同じ数式=ルールであらわされるということなんです!同じルールで作られるんです!この動物の模様によく似たパターンは1952年にイギリスの数学者アラン・チューリングによって作られたものでチューリングパターンと呼ばれています。動物の模様と物理、かけ離れていますが、その大元は実は案外昔なんですね~。動物の模様が同じ数式から表されているなら、そこに何らの自然の法則があるはずだ。自然界にあるルールつまり法則を見つけるのが物理学です。どうですか?少し動物の模様が物理ってことがわかってもらえましたか?動物の模様も動物たちのきまぐれでできているのではなく、あるルールに基づいて作られているかもしれないんです。
ただ、ここまで述べてきたことはあくまで理論にすぎません。本当なのかは実際に起きる現象を観察してやらなくてはいけません。そこで私たちは生物の模様についての理論が本当に正しいのか皆さんに少しでも実感していただくための実験を行いました。
(写真引用元: 「生命科学DOKIDOKI研究室」https://www.terumozaidan.or.jp/labo/technology/15/02.html)
ひまわり実験
ひまわりにもある法則が隠れていることをご存知ですか?ひまわりに隠れているルール、それは種のつき方にあります。ひまわりの種は右回りおよび左回りにらせん状にくっついています。この螺旋の数、数えてみますと実は必ず21,34,55,89とある法則性を持った数になっているんです。この数の法則性わかりましたか?実は21+34=55,34+55=89のように前の2つの数を足した数が次にきています。この数の列はフィボナッチ数列と呼ばれ、とても有名な数列です。それにしてもどうしてこんな不思議な構造がひまわりにあるんでしょう?この現象を磁性流体を用いて再現した論文があります。(Phyllotaxis as a Physical Self-Organised Growth Process, S. Douaby and Y. Couder)私たちはその再現実験を行いました。ぜひひまわりの種がつく仕組みをご覧ください。
ゼブラフィッシュの模様
模様がチューリングパターンによってよく再現できることはすでに述べました。でもそれって本当?大阪大学の近藤滋先生が、ゼブラフィッシュの模様観察によって、それを実際に確かめていらっしゃいます。私たちの班でもその観察実験を行う予定です。チューリングパターンをちょこっといじってみてできた模様が、本物の魚の模様でも再現できたら驚きですよね?
恋愛占い
動物の模様を考えるために使う数学は実は恋愛占いにも応用できちゃうんです!(笑) 恋のお悩みをお持ちの方はぜひ私たちの班にお越しください!あなたの恋愛を占っちゃいます!
これらの展示のほかにも、小柴ホールで物理ショーを行っています。詳細はこちら!