みなさんから寄せられた質問に物理学科の学生が答えます! 各班の活動内容、学科の生活や雰囲気などお気軽にご投稿ください。
中心以外に山ができているのは、やや小さめの数の目が沢山出たサイコロとやや大きめの数の目が沢山出たサイコロが多かったからだと考えられます。これは、一個のサイコロを何回か投げて遊んでいる時に、なぜかある数(例えば1とか6とか)の目ばかり沢山出ることがあることからもイメージできると思います。
また、中心以外の山と中心の山の間の低い部分にはあまり意味はありません。 この動画の図は、1000回サイコロを投げてみた一つの例を表しています。そのため、もう一度10個のサイコロを1000回投げた時には、この図とは全く同じ分布になる可能性は低く、異なる分布になると考えられます。例えば1が沢山出たサイコロを次の日も振ったときに、同じように1が沢山出るとは限らないでしょう。よって、中心以外に山ができるかどうかは場合によって変わってくると考えられます。
一方で、1000個のサイコロを1000回投げたとき(動画の下の方の図)は、中心だけが山になっています。このように多くのサイコロで試せば、各目が等しい確率で出る理想的なサイコロを想定しているので、ケースごとのばらつきが小さくなっていきます。 つまり、小さい数が多く出るサイコロが比較的多くなってしまうというような類のことはなくなっていき、中心以外に山ができる可能性は限りなく小さくなっていきます。 (アクティブマター班3年)
少なくとも弦理論では数論と関連する現象が多く発見されており、弦理論と数論との関係が研究されているようです。(数理物理学班班長)
系の「サイズ」という意味では、主に構成粒子の数や、量子状態の数によって統計力学が有効かが決まります。また、「平衡状態」と呼ばれる範囲にあるか「非平衡状態」にあるかによっても有効性が大きく異なります。
まずいわゆる古典力学の範囲についてお答えします。古典力学が適用されるような系(物理学の観察の対象)の統計力学では、主に構成粒子の数が統計力学の有効性と関係しています。
アクティブマター班で紹介した「ロシュミットのパラドックス」のような気体の系の場合は、数千~数万個で速度の分布が統計力学で予言されるようなものに近付きます。これは分子動力学法と呼ばれるコンピューターシミュレーションで確かめる事も出来ますので、ぜひ挑戦してみてください。
しかし、数万個程度の構成要素からなる系では測定される量の揺らぎが無視できません。このような揺らぎの無視できない系は従来の熱力学では上手く説明が出来ませんが、「小さな形の熱力学」や「情報熱力学」などの新しい枠組みが作られつつあります。
さて、量子系に話を移します。量子力学は基本的には原子サイズのスケール($10^{-10} \text{m}$程度)で有効な理論です。このスケールで変化の起こる集団の現象で、取りうる量子的な状態の数が十分大きければ、ある程度有効な予言が出来ます。実験で観察される金属や半導体などの物質は、顕微鏡で初めて見られるようなマイクロメートルスケールであっても数万から数十万個の原子から構成されています。そのため「平衡状態」については説明できる現象が多く知られています。
例えば電子のスピンから成る磁性体(磁石のようなもの)の場合、イジングモデルと呼ばれる各電子のスピンが上下を2つの状態を取るモデルなどが知られています。このモデルでは、スピン同士の簡単な相互作用から、磁石がキュリー温度を越えると磁化(磁石としての性質)を失うことが説明できます。(詳しくは物性班の記事をご覧ください。)
また、いわゆる「巨視的量子力学的現象」と呼ばれる、量子力学を用いた統計力学によって初めて説明が可能になる現象があります。 超伝導(物性班の記事はこちら)や超流動、ボーズ=アインシュタイン凝縮などがその例です。これらの現象は数マイクロメートル以上の目に見える系で観察されます。このような現象の説明が出来るというのは、統計力学の一つの成功例と言えましょう。とはいえ、まだまだ分からないことはたくさんあります。
「平衡状態」では十分に説明が出来るのですが「非平衡状態」に移るとそうもいかず、現在でも様々な系について実験、理論の両面から研究が進められています。「非平衡状態」のうち平衡状態から少しだけずれた状態については、1950年代に久保亮五先生がまとめた線形応答理論(物性班の解説PDFはこちら)によって説明ができています。さらに近年では実験技術や計算機技術の進歩もあって、「非線形な応答」と呼ばれる現象をはじめとして様々な研究が進んでいます。
どのようにして「平衡状態」に至るのかについてもまだ完全にはわかっておらず、活発に研究がされています。例えば「固有状態熱化仮説(ETH)」といったテーマが知られています。
(アクティブマター班長)
授業の面での大きな違いは、卒業研究があるかないかでしょうか。理物は卒論を書きませんが、物工は卒論を書きます。 研究の面では、理物は原子核や素粒子なども扱いますが、物工は(私の把握している範囲では)そういう研究をしていないという違いがあります。
もし進振りで理物と物工を迷っているようでしたら、学科のHP以外にも自分の興味ありそうな研究室のHPまで合わせて見比べてみるといいかもしれません。(量子物理学班)
3Aセメスターに「生物物理学」が選択科目として開講されているほか、4年生以降も生物物理に関連した科目を履修することができます。
また、4年次の「特別実験・理論演習」で生物物理系の研究室を志望することができますし、運が良ければ3年次の学生実験で「生物物理」の種目を受けることができます(3Aセメスターの学生実験では学生によって割り当てられる実験種目が違います)。(ウェブ担当)
結局物理は三年次以降で沢山やることになりますし、大学でなければ触れないような専門分野の話を研究の第一線にいる人からたくさん聞けるのはそれだけでお得です。もちろん数学や物理を多めに履修することもできます。色々な分野への進学を考えている人たちと同じクラスで議論できるのも利点の一つでしょう。研究そのものにどう役立つかはまだ分かりませんが、物理以外の分野の思考法や文化に触れることができたのは大きな財産であると考えています。 (アクティブマター班4年)
場の量子論の勉強をするのがよいと思います。量子力学の初歩と特殊相対論を知っているのならば、坂本眞人. 『場の量子論: 不変性と自由場を中心にして』 裳華房. は読めると思います。(数理物理学班班長)
数学はこれさえ知っていれば十分、というものはおそらくなく、必要な場面に遭遇したらその都度勉強する必要がありますし、好きなら勝手に勉強すればよいと思います。ただ、現象論をやりたい場合、複素積分や特殊関数の知識が必要になることは多いと思います。(数理物理学班班長)
必修の数学及び物理を、問題演習も合わせてきちんと勉強しておくことが(進振りのためにも、進振り後のためにも)大切なことだと思います。
また、駒場にいる間(2Aの間でも可能)にC言語やPythonに触れたり、LaTeXを使えるようにしておけば、3年生で困ることは少なくなると思います。(量子物理学班班長)
日常的な直観に反する部分が多く、かつ抽象度がより高いからでしょうか。(量子物理学班班長)
東大の理学部物理学科はどの程度実験をするのかという質問でしょうか?
詳しくは理物のカリキュラムも合わせて見て欲しいですが、大体2週間に三日間、1日3~7時間程度実験をします。(量子物理学班班長)
実際に実験してみないことには何も言えないと思います。(量子物理学班班長)
数学的に難しいことは気にしないことにして回答します。
まず、前提として、「$Q$の測定結果が厳密に$q$になる確率」というものは0です。ですので、連続量の測定を考える場合は、例えば、正の数$\Delta q$について、「$Q$の測定結果$x$が$[q - \Delta q, q + \Delta q]$の範囲に入る確率」というものを考えることになります。 このとき、位置固有ケットを$| q \rangle$として、射影演算子を$E^Q(q) = |q\rangle \langle q |$とおけば、 $$ \text{Bornの確率規則:} \mathrm{Pr}\{x \in [q - \Delta q, q + \Delta q]|| \rho\} = \int_{q - \Delta q}^{q + \Delta q} \mathrm{Tr}(E^Q(q) \rho) \mathrm{d}q = \int_{q - \Delta q}^{q + \Delta q} \langle q |\rho |q\rangle \mathrm{d}q$$ $$ \text{射影仮説:} \rho_{x \in [q - \Delta q, q + \Delta q]} = \frac{1}{\mathrm{Pr}\{x \in [q - \Delta q, q + \Delta q]|| \rho\} } \int_{q - \Delta q}^{q + \Delta q} E^Q(q) \rho E^Q(q) \mathrm{d}q= \frac{1}{\mathrm{Pr}\{x \in [q - \Delta q, q + \Delta q]|| \rho\} } \int_{q - \Delta q}^{q + \Delta q} \langle q |\rho |q\rangle |q\rangle \langle q |\mathrm{d}q$$ とすれば大丈夫です(記法は量子測定の解説PDFに従っています)。
また、測定値を見ない場合は、$\Delta q = \infty$にすることに対応しているので、測定後の系の状態は $$ \int_{- \infty }^{\infty}\langle q |\rho |q\rangle |q\rangle \langle q | \mathrm{d}q$$ となります。(量子物理学班班長)
結局は数学に興味があるのか、それとも物理に興味があるのかということに集約されると思います。
一度数学科で物理っぽいことをやっていそうな先生や、物理学科で数学っぽいことをやっている先生にメールをしてお話を聞くことをお勧めします(量子物理学班班長)。
まず実験以外の活動についてお答えします。物性班では主に2つの自主ゼミを並行して行っていました。全員が全てのゼミに参加しているというわけではなく、各自が興味あるゼミに参加するという形態を取っていました。
私たちは2つのゼミをそれぞれ、「分類班」「相転移班」と読んでおり、分類班ではトポロジカル物性について、相転移班ではそれ以外の話題を勉強しました。
相転移班ではNishimori, "Elements of Phase Transitions and Critical Phenomena"の最初の方と、Kita, "Statistical Mechanics of Superconductivity"の12章までを輪読しました。これらのゼミは月に3回程度、発表者を決めて輪講を行う感じでした。
分類班は最終的に2人だけで議論をしていたこともあって何か一冊を時間をかけて読んだということはないのですが、整数量子Hall効果のPDFであがっている参考文献以外にはトポロジカル物性に関する論文を一緒に読んだりしていました。こちらはあらかじめ予習をした上で疑問点などを議論する形で行いました。こちらは週一くらいのペースで行っていました。
以上で書いたのが4年生(当時は3年生)中心の活動で、3年生(2年生)は昨年の秋から年明けくらいまで別のゼミで量子力学と統計力学の基礎を勉強してもらい、その後は自由に文献の輪読をしていたようです。
物性班の活動としてはその他、班長が毎週量子スピン系におけるHaldane現象について、Tasaki, "Physics and Mathematics of Quantum Many Body Systems"に基づいた発表を行っていました。
続いて実験の活動についてお答えします。物性班は早い段階から中辻研究室と連絡を取り、実験の時期やテーマについて定期的に相談させていただいていました。最終的には3月末から4月にかけて、関連する理論の勉強も含めて比較的短期間で行いました。実験時は緊急事態宣言は発令されていませんでしたが、一つの実験に人数が集中することを避けるため、物性班で3つのグループに分かれて異なる実験を行いました。実験については中辻研究室の方々に非常に丁寧に指導していただき、綺麗な実験結果を得ることができました。 (物性班長)
実験結果を正しく説明できるのであれば、どの解釈でも問題ないと思っています。 ただ、何か一つ選べと言われたらコペンハーゲン解釈を選ぶと思います。(量子物理学班長)
物性物理学を勉強するチンギスハーンはとても魅力的だと思います。(物性班長)
代にもよりますが、5〜10人はいると思います。中にはAtCoderのレーティングが黄色や橙色の人もいます。必修の授業でプログラミングの課題があるので、競プロに親しんでいるといいことがあるかもしれません。(ウェブ担当)
洒落に説明は必要ないのです。(物性班長)
仰るとおり、電子が動くという表現を古典的なイメージで用いると不正確だということになります。物質の運動を量子的に扱う上では電流密度演算子と呼ばれるものを考え、その期待値を計算することで電流密度を求めます。
物性物理において電磁場を量子的に考えるか、古典的に考えるかというのは難しい問題で、状況によって扱いを変えることが多いです。量子ホール効果のように電場や磁場を外場として扱う状況では、それらは古典的な場として考えています。原理的には電磁場自体も量子化される必要があるわけですが、その場合マクスウェル方程式は量子化された場の量に対する関係式として表現されます。(物性班長)