東京大学 大学院理学系研究科・理学部

2010年度のPhysics Lab.
メタマテリアル班
メタマテリアル班

■ 目的

完全レンズ内ので電磁波の光路
[fig.1] http://www.cmth.ph.ic.ac.uk/photonics/ Newphotonics/pics/Vlens.jpg より転載

光や音に対して自然界に存在する物質とは全く異なった応答を示す人工物質「メタマテリアル」の制作、解析を行い、その特性を調べます。


■ 概要

最も一般に知られているメタマテリアルは光を含めた電磁波に対して特異な応答を示す物質、電磁メタマテリアルだと思います。電磁気学で物質の電磁波に対する応答を決めるパラメータである誘電率と透磁率をともに負の値にすると屈折率を負にすることができることは1968年に提唱されていましたが、2000年にこの負の屈折率を持つ電磁メタマテリアルを使うと、屈折限界を超えた解像度を得ることが可能な「完全レンズ」(現在は「スーパーレンズ」とも呼ぶようです)を作ることができるという論文が発表され、話題になりました。[fig.1]に示したのは理論的に示されたレンズの一例とその内外を通る電磁波の光路です。また、その数年後の2006年には同じく電磁メタマテリアルを使って、マイクロ波の領域で電磁波の光路を操ることで周りから不可視になることを実現した「透明マント」が作られ、今も注目を帯びています。やはり[fig.2]に透明マントの内外での光路を示した図を与えました。

現在では、光だけでなく、一般の波動に対してこのようなメタマテリアルの考えを適用することで従来の物質では考えられなかったような面白い現象が見つかっています。今回の私たちの班でも、その応用例の一つを作ってみたいと思います。


透明マント
[fig.2] J. B. Pendry, et al, Science 312, 1780 (2006)から引用

■ 実験内容

今回私たちは以下の二つの実験を行い、当日に結果を発表する予定です。


①電気回路を用いたシミュレーション

前述のようにメタマテリアルは光や音以外にも波としてとらえられる現象に対してならより広く一般的に考えられます。この実験では電流(電圧)を波としてとらえ、これを入射させる媒質として電気回路を製作することで波に対する物質の応答について考えます。電気回路に組み込んだ抵抗やコンデンサー、コイルの持つ値を変化させることで、光や音で言う、屈折や反射などの物理現象を電気回路内で再現できます。五月祭当日は製作した回路を展示し、実際に演示実験を行う予定です。


②音響メタマテリアル

音響メタマテリアルとはその名の通り、音波に対して特異な応答を示す人工物質のことです。前述の「完全レンズ」を音波の領域で再現しようと考えています。「完全レンズ」に関する説明はhttp://blog.livedoor.jp/physicslab_2011/archives/cat_79109.htmlに多少書いておきましたのでそちらをご覧ください。五月祭当日は作製した音響メタマテリアルと解析結果を展示、発表したいと考えています。