Advent Calendar

CPとスクミュとSchwarzschild

⚠記事の内容は学生個人の見解であり、所属する学科組織を代表するものではありません。

CPの話

この記事は理物 Advent Calendar 2022の22日目の記事です. 「理物」Advent Calendarにこのタイトルの記事が投稿されれば,多くの人は CP(Charge conjugation Parity) 対称性の記事だと思った事でしょう.
...もちろん違います! CP(CouPling) の話です!! 前回に引き続き,物理に関する内容0で最後まで行くつもりでこの冒頭を書いています.同じアドカレの量子力学について書いた学科民の記事が10,000 views(?)とかでプチバズりしてる中,一切物理に関係ない内容を書きます.

(追記) やっぱりちょっとだけ物理の話も入れます.

はじめに

今日12月22日は声優大西亜玖璃さんの2nd写真集『旅の途中』の発売日です.おめでとうございます! ということで,彼女の演じる『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』に登場する『上原歩夢』のCP(カップリング,他キャラとの絡み)の中から特に自分が好きな4組について思うがままに書いていこうと思います.画像が多く冗長になってしまったので各CPで折りたたみました. 注意として,アニガサキのみに登場する『高咲侑』とのCP(ゆうぽむ)とスクスタのみに登場する『あなた』とのCP(あなぽむ)は1つとしてカウントし,CP名は前者を採用しました. さらに,全てのCPについてCP対称性を仮定した表記になっています.(当初はこの記事唯一の物理要素だった)

1.ゆうぽむ(高咲侑×上原歩夢)

展開

言わずとしれた超有名&王道CPです.アニガサキ1期はこの2人の成長を描いていると言っても過言ではないでしょう. 小さい頃から一緒に育ちその2人の世界で完結し,それでお互いに満足していた2人. せつ菜のライブを見たことで外の世界に興味を持ち前に進む侑と,2人の世界に固執し歩みを止めてしまいそうになる歩夢の物語が,ただ自分から離れていく侑に歩夢が縋るだけでなく,スクールアイドルの自分を応援してくれるファンを意識し大切に思う中で「実は自分こそ侑から離れているのではないか」という葛藤を入れ込むことでとても鮮やかに描かれています.

2人の家は同じマンションで隣接しています.そのため毎朝歩夢が侑にモーニングコールをする→侑が起きてベランダに出てくる→「おはよう」と他の誰よりも早く言葉を交わすというムーブをしているわけです.こんなのもう結婚じゃん. yupomu.png

ゆうぽむのさらに恐ろしい所は一見先に2人の世界を殻を破ったかのように見える侑も歩夢に並々ならぬ想いを抱えているという事です.いくら最近元気が無さそうに見えたからって幼馴染を励ますためだけに「変わらぬ想い」が花言葉の花を送りますか普通??これでその気がないなら侑は相当なたらしです. image.png

1期12話の快進撃はまだまだ止まりません.ローダンセの花を渡した帰り道,バスに乗らずに歩いて帰ろうと提案した侑が道中で放った言葉
「でもさ、歩夢を最初から可愛いって思ってたのは私なんだからね」
え!?えー!?!?🤯🤯🤯🤯 image.png (そりゃ歩夢もこんな顔になるわ...)

普段独占欲を浴びる側の人間が見せる独占欲って本当に良い. 2期5話の観覧車デートなど他にも挙げればきりがありませんが,後ろに3つCPが控えているのでゆうぽむについてはこの辺で終わりにします.

最後にこれだけ!『Dream with You』や『Awakening Promise』などの後に流れる劇伴である『想い、花ひらく時』.これは本当に名曲で,特に2期12話の『開花宣言』の歌詞の裏で流れているシーンなどはこれ以上なくその場面を惹きたてています.ゆうぽむを語る上では外せない曲です.


2.あゆしず(上原歩夢×桜咲しずく)

展開

ゆうぽむに比べるとややマイナーCP感が否めないこのあゆしずというCP.これはPi〇ivの二次創作の数にも表れていて,この記事を書いている2022/12/20現在で「#上原歩夢」とタグ付けされた全作品11,694件の内,「#ゆうぽむ」タグが付いた作品が3,718件,「#あゆしず」タグが付いた作品が136件となっています.でもあゆしずはゆうぽむに負けないくらい魅力的なCPなんです!

...と意気込んだのはいいものの,この2人ってほとんど絡まないんですよね.アニガサキで言うと2期5話で一緒に即興劇をしただとか,2期13話で『オードリー』を踊っただとかその程度で,1期では猶のこと絡みません.また,スクスタについても2人だけで映ったスチルは(自分の知る限り)存在しませんし,ストーリー上での接点もほとんどないように思えます.しずくにはしずかす(桜咲しずく×中須かすみ),かなしず(近江彼方×桜咲しずく)など他にメジャーなCPがあるのでそれに霞みがちなのは事実です.

では,なぜ人はあゆしずにハマるのか...そうですね!虹ヶ咲にはアニガサキでもスクスタでもないもう1つの時空が存在します.

です. image.png (原作は4コママンガですが,これをアニメ化した『にじよん あにめーしょん』が2023/1/6よりTOKYO MX,BS11ほかにて放送開始です!)

にじよんは作中に登場するキャラクターたちのスクールアイドルに関わる部分以外での日常を描いています.ここでは普段なかなか見ないようなキャラ同士の絡みが見られるまさにCP厨垂涎のコンテンツです.

まずは次の2つの動画をご覧ください.タイトルからして約束されたあゆしずですね.ありがとう...



image.png

怒る演技の参考にしようと歩夢を頼るしずくですが,歩夢の演技があまりにも可愛らしくその役には適さなかったものの,最終的に別の役の参考になるというお話です.特に②の歩夢を完コピする④のしずくが微笑ましい一場面でした.

ただこれでは仲の良い先輩後輩の関係を脱していないじゃないか!と思われる方もいるかもしれません.たしかに一理あります. では次の動画をご覧ください.

image.png ここでしずくが身近で尊敬している人物が歩夢であるという衝撃のカミングアウトがなされます.ちなみにそれ以前のスクスタのストーリーやにじよん,生放送のドラマパート(いわゆる生首アニメ)では出てきていない完全初公開情報でした. このお話の中では他にも

「清楚で可憐な容姿  柔らかく温かな雰囲気  正に物語のヒロインといった佇まい」

と歩夢を評しており,しずくがいかに歩夢に憧れていることがわかります.

しずくが歩夢に憧憬を抱いているのは今や間違いありません.ですがそれは恋愛感情とは別なのではないか?という意見もまたあるでしょう. ここで2期5話を思い出してみましょう. image.png 2期5話はしずくの脳内のいわゆる"nmmn"による妄想が垂れ流される神回です. 感想は置いておいて,今考えるべきは

尊敬している人間に対してあんなことやこんなことの妄想をするのか

という点です.普通しませんよね.つまり,もはや憧れや尊敬を通り越した別の感情がしずくに芽生えているということになります.それが何なのかはわざわざ言う必要もないでしょう.

さて,これまではしずくから歩夢への矢印ばかりを考えてきましたが,歩夢はしずくに対して"そういう感情"を抱いているのでしょうか?もしこれが無いと悲恋一直線です. そこでまた2期5話を頼ります.次のシーンは侑としずくが一緒にいたことに対してせつ菜が

「デートかと思いました!」

と言い放つシーンです. image.png 歩夢さん,動揺を全く隠しきれていません.自分を含め多くの視聴者は大好きな幼馴染である侑がしずくとデートしていた可能性に動揺していると解釈した事でしょう.しかし,こういう解釈もできるのではないでしょうか.
上のシーンで歩夢は(密かに好意を寄せていた)しずくが侑とデートしていた可能性に動揺している
はい,歩夢からしずくへの矢印も存在していますね!これにてあゆしずがたしかに存在することが証明できました. 上はかなり無理やりな解釈に思えるかもしれませんが,そもそも1期を通して歩夢は成長し「侑ばなれ」をしているはずです.にもかかわらず尾行という1期よりも悪化している行動を取っているのは侑以外に原因があると考えるのがむしろ自然ではないでしょうか. 真相は歩夢のみぞ知る...

3.あゆせつ(上原歩夢×優木せつ菜)

展開

あゆしずに引き続きA・ZU・NA繋がりのCPであるこのあゆせつ.今回紹介する4つのCPの中で最も表記ゆれが激しく,よく見るものだけでも

あゆせつ/ぽむせつ/せつあゆ/せつぽむ

の4つが存在しています.自分が語呂がいいのであゆせつ派です.

あゆせつと言えばだれもが思い浮かぶのはグータッチでしょう. image.png 1期12話で侑との関係,ファンとの,スクールアイドルとの向き合い方について悩んでいる歩夢の背中を押すせつ菜と image.png 2期6話でスクールアイドルフェスティバルの開催運営に行き詰まり諦めかけるせつ菜にかつて自分が掛けられた言葉をそっくりそのまま返す歩夢の激熱シーンです.

そもそも歩夢がスクールアイドルを始めたのはせつ菜のライブがきっかけ.あの日あの『CHASE!』のパフォーマンスを見て自分の気持ちをまっすぐ伝えるスクールアイドルに触発され,「動き始めたのなら,止めちゃいけない.我慢しちゃいけない.」「自分の気持ちに素直になりたい.」と思った瞬間からあのキャナルコートでの『Dream with You』へ繋がります.一度はそれを見失いかけていた歩夢ですが,きっかけであるせつ菜からの
「始まったのなら,貫くのみです!」
という言葉はその気持ちを再び呼び醒ますには十分すぎる言葉だったでしょう.そしてまた,そのきっかけの人が道を見失いかけていた時
「始まったのなら,貫くのみ,でしょ?」
という言葉が自然に出てきたのだと思います.

もうこれでお終いでよくない?2人は良き仲間,良きライバル!! たしかにそれでもいいのですが,今回自分は2人が付き合っているという確たる証拠を得ました.こちらをご覧ください. image.png スクスタの未来ハーモニー衣装のSR歩夢のサイドエピソード1です.内容を知らない多くの人はこのタイトルを見てデート相手は『あなた』だろうと思いますよね.自分もそう思って再生を始めました.

image.png image.png

え?デート相手せつ菜なの!?!?

しかもお互いの買った洋服褒め合ってるし.もうこんなの完全に付き合ってるじゃん… ふぅ・・・,今日もまたあゆせつを証明してしまいました!

やや本旨とは外れますが,このあゆせつ(というかA・ZU・NA)の中の人たちの絡みも最高です.たくさんあるうちのベストショットを最後に添えて.

5年間せつ菜,菜々を演じてくれて本当にありがとうございました. そして今日はこの楠木ともりさんの誕生日でもありますね.おめでとうございます.

4.しおぽむ(三船栞子×上原歩夢)

展開

しおぽむほどその人が触れている虹ヶ咲の媒体によって知名度が大きく変わるCPもいないでしょう.スクスタやにじよんではかなり中心的な役割を果たしますがアニガサキ2期ではほとんど絡まず,しおぽむオタクの阿鼻叫喚がTwitterにこだましていました.

しおぽむ,正直に言うと言語化がとても難しいです.なので絵だけ挙げて何を言いたいのかはみなさんに補完していただくことにします.時間が取れたら書き加えます…

image.png image.png image.png (ここまでで1つの主張です)

image.png image.png image.png image.png (こんなにグイグイ行く歩夢は中々見られません)

image.png (いつもの...?)

スクールアイドルミュージカルの話

:::note alert 折り畳みのタブの中にはネタバレを含みます ::: そもそもなぜ上原歩夢のCPを紹介していたのか思い出すと,今日が上原歩夢役の大西亜玖璃さんの写真集の発売日だからでした. 大西亜玖璃さんは愛知出身ですが,上でも登場した高咲侑役の矢野妃菜喜さんや三船栞子役の小泉萌香さんを始め,虹ヶ咲のキャストは関西出身の(関西に実家がある)方がそれなりに(4/13)います.

ところで最近,ラブライブ!史上初関西を舞台にしたコンテンツが誕生しましたね. そう,スクールアイドルミュージカルです! image.png

自分は新国立劇場で行われた東京公演の千秋楽を観劇したのですが,本当に圧倒されました. 昔から(音楽を目的に)バレエやオペラなどを鑑賞することがあって,キャストを見て碌に演劇の経験無いし...と高を括っていて元々見に行く予定はなかったのですが,TLで異常に好評だったので一度くらい見に行ってみるか...と思って行きました.結果として冒頭3分で感動して泣きました.チョロいな~

YouTubeに公開ゲネプロの抜粋が上がっています.現地で初めて体感するのが最も感動できると思うので大阪公演に行くことが確定している方の視聴は正直オススメしません. ラブライブ!のミュージカルってどんなものだろう?と思っている方や,行くか迷っている方,あの瞬間をもう一度少しでもいいから味わいたい方向けの動画です.


キャストの演技はほぼ文句の付けようがない程度には完成されていたのですが,いくつかストーリーについて気になる点があったので共有して,これに対する周りの人の意見が訊きたいと思って記事に(半ば強引に)突っ込みました.

ストーリーで気になった点※ネタバレを含みます

image.png (キャラ名参照用)

幼馴染の嫉妬の必要性

アンズが椿咲花に転入してからというもの(あるいはその前に雑誌などで見ていた頃から),アンズにゾッコンなルリカに対してユズハが嫉妬するシーンがあったじゃないですか.キョウカが倒れてアンズが滝桜に戻った後,ストリートライブ前のシーンで妬きもちをやいていた,とルリカに告白するシーンもありましたよね. 自分はここにすごい違和感を覚えて,というのも恐らく脚本家はラブライブ!だし幼馴染で昔から続いてきた関係と高校で新たにできる関係との対比は欠かせないよね!という気持ちで入れたと思うのですが,そもそもあの限られた時間で幼少期の描写はできないし,この2人がどのくらい昔から続くどのくらい強い関係なのかわからないまま話が微妙に拗れて勝手に解決したな...という印象を受けました.

ミスズの授業料免除設定の必要性

ミスズは恐らく滝桜の中でもトップの実力を持つ学生でしょう.キャスティングからもそれが伺えて,西葉瑞希さんはあの学生役のキャストの中では演劇も歌唱も1つ頭抜けていたように感じました. そのミスズがセンターをせずにセンターのアンズ(理事長キョウカの娘)の補佐役,世話役を任されている.たしかに誰もが大人の事情を感じる所です. ミスズが「自分たちにもセンターになれるチャンスが欲しい」と理事長のキョウカに直訴した時,理事長は「家庭状況わかってる?授業料免除してるよ?(意訳)」と半ば脅しとも取れる発言で封殺します. ここでまた自分は違和感を持ちました.というのもミスズの家庭状況はこれ以降一切物語に関わってこないんですよね.しかもお金の話を持ち出すのは(それが空想の世界の話であるとは言え)かなり印象に悪いです.キョウカを徹底的に悪役にしてたるならそれがベストなのかもしれませんが,そういう話ではありませんでしたし,理事長権限をちらつかせるくらいに済ませていればそれで済んだんじゃないかな...というのが正直な感想です.

廃校阻止のためのスクールアイドル

アンズが椿咲花に転校してくる前,親であるマドカが経営するこの学園の経営が危ういと知ったルリカが「スクールアイドル部を作ってこの学校を救いたい」という何度ラブライブ!シリーズで擦られたかわからない話をし始めます. マドカはキョウカをライバル視しているので当然この要求を認めないのですが,その後アンズの転入など色々な情勢の変化によってスクールアイドル部が椿咲花に設立されました. その後割とすぐにルリカは「自分がやりたいからスクールアイドルをするんだ」と切り替えるのですが,それなら廃校阻止の話いらなくない?無理にラブライブ!らしさを入れなくても良くない?という気持ちになりました. これは自分が廃校阻止の道具としてのスクールアイドルを疑問視し,虹ヶ咲のように好きでスクールアイドルをやっている少女たちが一番輝いていると思っているからでもあるのですが,ルリカは以前から夢で滝桜のライブステージに立って一緒に踊り始めるくらいスクールアイドルに興味を示していましたし,アンズが入学してきたから一緒にスクールアイドルやりたいと思ってスクールアイドル部を作ろうとする,というようなストーリーでもよかったんじゃない?と思った1シーンでした.

アンズが椿咲花のOPアクトに出る=滝桜のステージに出ない??

物語の最終盤,滝桜の文化祭ステージにて椿咲花スクールアイドル部がOPアクトを務めるシーンがあります.アンズが抜けて5人になってもなお,アンズの籍を残すように6人のときのフォーメーション,譜割でパフォーマンスをするのを見てアンズが飛び入り参加し,その後(本来この場でメジャーデビューを発表する予定だった)滝桜のみんなに謝るシーン,ここで強烈な違和感に襲われました. 椿咲花のパフォーマンスってOPアクトですよね?それに参加したところで「滝桜のエース,他校のパフォーマンスにゲスト出演!」で済ませられるし,その後に控えるメインプログラムである滝桜のパフォーマンスにも普通に乗れるのでは?というか椿咲花のステージにに参加した時点で椿咲花への再転校を全員が確信しているのはどういういことなんだろう,もう少し説明が欲しいな...というモヤモヤが残りました.

未完成ドリーム!の位置づけ

未完成ドリーム!はスクールアイドルミュージカルテーマソングとして作られた曲です.開始前の場内BGMにこれの変奏が用いられていたりとたしかにテーマソングではあったのですが,劇中でキャストがパフォーマンスしたのは最後のライブパートの1度だけでした.すごいいい曲なのにもったいない...(これは何度も聴きたかったという願望です)

まとめ

ここまでいくつかストーリーとして気になった点を挙げてきましたが,文句を言いたいのではなく,純粋に違和感を持ったのでそれを共有し,別の方の意見も聞きいてそれが解消出来たらいいなという気持ちで書きました. 大阪公演が終わって自由にTwitter上でネタバレを含む感想が聞ける日が待ち遠しい...

Schwarzschildの話

先ほどまではラブライブ!ファンならスクールアイドルミュージカルは人生で1度は経験した方がいいという話をしていました. ところで,物理学科の学生なら人生で1度は経験した方がいいものとしてよく挙げられるのは三次元極座標表示のラプラシアン

$$ \begin{align*} \nabla^2=\frac{1}{r^2}\frac{\partial}{\partial r}\left( r^2 \frac{\partial}{\partial r}\right)+\frac{1}{r^2 \sin\theta}\frac{\partial}{\partial \theta}\left(\sin\theta\frac{\partial}{\partial \theta} \right)+\frac{1}{r^2\sin^2\theta}\frac{\partial^2}{\partial \phi^2} \end{align*} $$

の導出です.しかし,これは1度と言わず複数回演習でやらされますよね. そこで本当に人生で1度はやれば十分なSchwarzschild計量におけるEinstein Eq.からSchwarzschild半径を計算する事をやってみました. ここから無限に式が続きます.オタクのみなさんはここまでお付き合いいただきありがとうございました.

Einstein Eq.

Einstein Eq.は次の式で表されます.

$$ \begin{align*} R^{mn}-\frac{1}{2}g^{mn}R=\frac{8\pi G}{c^2}T^{mn} \end{align*} $$

\(\hspace{0.2em}R\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) はRicciスカラー,\(R^{mn}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) はRicciテンソル,\(T^{mn}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) はエネルギー・運動量テンソルです. 簡単のために \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}T^{mn}=0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) の場合を考えます.これはいわゆる真空解と呼ばれるものです. 解くべき式は次まで簡単に(?)なりました.

$$ \begin{align*} R^{mn}-\frac{1}{2}g^{mn}R=0\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\therefore\,\,R^{mn}=R_{mn}=0 \end{align*} $$
(厳密には \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}R_{mn}=0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) が元の式の解の1つというだけで,解がこれだけとは必ずしも限りません.) もうこれ解けているように見えますね.しかし実際には2階の偏微分方程式です. それを見るには \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}R\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) や \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}R_{mn}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) などが次のように定義されることからわかります.
$$ \begin{align*} R_{ml}&=R^n_{mnl}\\ R^{n}_{mkl}&=\partial_k \Gamma^{n}_{lm}+\Gamma^{n}_{ki}\Gamma^i_{lm}-\partial_l\Gamma^n_{km}-\Gamma^n_{li}\Gamma^i_{km}\\ \Gamma^n_{lm}&=g^{nk}\Gamma_{klm}\\ &=\frac{1}{2}g^{nk}\left(\partial_lg_{mk}+\partial_mg_{lk} -\partial_kg_{lm} \right) \end{align*} $$
ここでよくあるEinsteinの縮約記法を用いています.これは上下の添え字が同じ文字だった場合,それについて和を取るが和の記号 (\(\sum\hspace{0.2em}\)) は省略するというもので,つまり上の第1式は実際には
$$ \begin{align*} R_{ml}&=\sum_{n} R^n_{mnl} \end{align*} $$
を表しています. \(\hspace{0.2em}R_{ml}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) を求めるためには \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\Gamma_{klm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) まで遡って計算を始める必要がありますが,それから \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}R_{ml}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) に行く過程で2度偏微分がかかることがわかりました. 逆に, \(\hspace{-0.2em}R^{mn}=0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) は計量 \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}g^{mn}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) を求める方程式だとも言えます.

Schwarzschild計量

計量とはその空間の距離や角度を決めるために必要なものです.上記のEinstein Eq.の球対称な解 \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}g_{mn}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) の1つ(どうやら一意性も証明できるようです)にSchwarzschild計量というものがあり,その計量における線素を次のように置きます.

$$ \begin{align*} \mathrm{d}c\tau^2=e^{2f(r)}\mathrm{d}ct^2-(e^{2g(r)}\mathrm{d}r^2+r^2\mathrm{d}\theta^2+r^2\sin^2\theta\mathrm{d}\phi^2) \end{align*} $$
時間と動径方向に関わる計量が普段に比べて変化し,それが時空間座標4成分のうち \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}r\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) にのみ依存すると仮定された計量です.指数関数型に置いたのは計算の便法で,これによって何か解を制限しているという事ではありません.

線素の式より\(\hspace{0.2em}g_{mn}\hspace{0.2em}\)として

$$ \begin{align*} g_{00}=e^{2f(r)}\,\,\,\,\,\,g_{11}=-e^{2g(r)}\,\,\,\,\,\,g_{22}=-r^2\,\,\,\,\,\,g_{33}=-r^2\sin^2\theta \end{align*} $$
が得られます.でも上の式で求まった\(\hspace{0.2em}g_{mn}\hspace{0.2em}\)とRicciスカラーを出すときに使いたい\(\hspace{0.2em}g^{mn}\hspace{0.2em}\)では添え付き文字の上下が違います.実はこの2つは異なるもので
$$ \begin{align*} g^{ij}g_{jk}&=\delta^i_k\\ &=1\,\,(i=j)\\ &=0\,\,(i\neq j) \end{align*} $$
になるのでそこから求めます.簡単に求まって(逆数取るだけです)
$$ \begin{align*} g^{00}=e^{-2f(r)}\,\,\,\,\,\,g^{11}=-e^{-2g(r)}\,\,\,\,\,\,g^{22}=-\frac{1}{r^2}\,\,\,\,\,\,g^{33}=-\frac{1}{r^2\sin^2\theta} \end{align*} $$
になります. ここに登場する関数 \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}f(r),g(r)\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) (というよりはむしろ \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}e^{f(r)},e^{g(r)}\hspace{-0.2em}\) )をEinstein Eq.より決定するというのがここでの流れです.

Chrsitoffelテンソルの計算

前々節で出てきた \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\Gamma_{klm}\hspace{0.2em}\)などはChristoffel テンソルと呼ばれます.先に述べたようにこの計算には \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\partial_l g_{mk}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) などが必要なのでそれをまず計算します. 見やすくするために次のような表を作ります.(\(f,g\hspace{0.2em}\)の変数\(\hspace{0.2em}r\hspace{0.2em}\)は省略します)

\(\hspace{-0.2em}g_{00}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}g_{11}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) \(\hspace{0.2em}g_{22}\hspace{0.2em}\)                           \(\hspace{0.2em}g_{33}\hspace{0.2em}\)                          
\(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\partial_{0} \hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) 0 0 0 0
\(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\partial_{1} \hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}2f'e^{2f}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) \(\hspace{0.2em}-2g'e^{2g}\hspace{0.2em}\) \(\hspace{0.2em}-2r\hspace{0.2em}\) \(\hspace{0.2em}-2r{\sin^2\theta}\hspace{0.2em}\)
\(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\partial_{2} \hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) 0 0 0 \(\hspace{0.2em}{-2r^2\sin\theta\cos\theta}\hspace{0.2em}\)
\(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\partial_{3}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) 0 0 0 0

わざわざ説明する必要もないと思いますが,縦のラベルの計量テンソルの要素を横のラベルで偏微分しています.かなり疎な表であることがわかります. これと \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\Gamma_{klm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) の式

$$ \begin{align*} \Gamma_{klm}=\frac{1}{2}\left(\partial_lg_{mk}+\partial_mg_{lk} -\partial_kg_{lm} \right) \end{align*} $$
より,非零な \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\Gamma_{klm}\hspace{0.2em}\)を持つ {\(\hspace{0.2em}k,l,m\hspace{0.2em}\)}の組は
$$ \begin{align*} \{k,l,m\}=\{0,0,1\},\{1,1,1\},\{1,2,2\},\{1,3,3\},\{2,3,3\} \end{align*} $$
の5つに絞られます.定義より明らかに \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\Gamma_{klm}=\Gamma_{kml}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) なことにも注意すると次のような表になります.

\(\hspace{-0.2em}k\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)   {\(\hspace{0.2em}l,m\hspace{0.2em}\)}                         \(\hspace{0.2em}\Gamma_{klm}\hspace{0.2em}\)                      
0 {0,1} \(\hspace{-0.2em}f'e^{2f}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
1 {0,0}
{1,1}
{2,2}
{3,3}
\(\hspace{0.2em}-f'e^{2f}\hspace{0.2em}\)
\(\hspace{0.2em}-g'e^{2g}\hspace{0.2em}\)
\(\hspace{0.2em}r\hspace{0.2em}\)
\(\hspace{0.2em}r\sin^2\theta\hspace{0.2em}\)
2 {1,2}
{3,3}
\(\hspace{-0.2em}-r\hspace{0.2em}\)
\(\hspace{0.2em}r^2\sin\theta\cos\theta\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
3 {1,3}
{2,3}
\(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}-r\sin^2\theta\hspace{0.2em}\)
\(\hspace{0.2em}-r^2\sin\theta\cos\theta\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)

上の表の例えば \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}k=0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) のグループには \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}g^{00}=e^{-2f}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) を掛けてその0を上に持って行く(これは \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}g^{nk}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) が対角型だからできることであって一般には成り立ちません)という操作をすることで \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\Gamma^n_{lm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) がようやく得られます.同様に表にまとめると次の通りです.

\(\hspace{-0.2em}n\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)   {\(\hspace{0.2em}l,m\hspace{0.2em}\)}                         \(\hspace{0.2em}\Gamma^n_{lm}\hspace{0.2em}\)                      
0 {0,1} \(\hspace{-0.2em}f'\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
1 {0,0}
{1,1}
{2,2}
{3,3}
\(\hspace{0.2em}f'e^{2(f-g)}\hspace{0.2em}\)
\(\hspace{0.2em}g'\hspace{0.2em}\)
\(\hspace{0.2em}-re^{-2g}\hspace{0.2em}\)
\(\hspace{0.2em}-re^{-2g}\sin^2\theta\hspace{0.2em}\)
2 {1,2}
{3,3}
\(\hspace{-0.2em}\frac{1}{r}\hspace{0.2em}\)
\(\hspace{0.2em}-\sin\theta\cos\theta\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
3 {1,3}
{2,3}
\(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\frac{1}{r}\hspace{0.2em}\)
\(\hspace{0.2em}\cot \theta\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)

こうしてRicciテンソルを求める下準備ができました.

Ricciテンソルの計算

Chirstoffelテンソルの計算だけでも相当面倒でしたが,ここからまた一段と面倒に,さらに集中力が削られる計算が続きます. 上述の通りRicciテンソル \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}R_{ml}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) は次のように計算されます.

$$ \begin{align*} R_{ml}=R^n_{mnl}=\partial_n\Gamma^n_{lm}+\Gamma^n_{ni}\Gamma^i_{lm}-\partial_l\Gamma^n_{nm}-\Gamma^n_{li}\Gamma^i_{nm} \end{align*} $$
Chirstoffelテンソルを縮約した形\(\hspace{0.2em}\Gamma^n_{nm}\hspace{0.2em}\)が複数回登場するのでこれだけ先に計算しておきます.上の表を見ればすぐわかり
$$ \begin{align*} \Gamma^i_{i0}=0\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\Gamma^i_{i1}=f'+g'+\frac{2}{r}\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\Gamma^i_{i2}=\cot\theta\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\Gamma^i_{i3}=0 \end{align*} $$
になります.

さらに道筋をよくするため上の \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}R_{ml}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) 式の4項をそれぞれ \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}A_{lm},B_{lm},C_{lm},D_{lm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) と置きます.それぞれどのような {\(\hspace{0.2em}l,m\hspace{0.2em}\)} の組で非零の値を取るのか検討しましょう.

始めに \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}A_{lm}=\partial_n\Gamma^n_{lm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) について. \(\hspace{-0.2em}\Gamma^n_{lm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) の {\(\hspace{0.2em}l,m\hspace{0.2em}\)} については一切手が加えられていないので先の表の8パターン( {\(\hspace{0.2em}l,m\hspace{0.2em}\)}={\(\hspace{0.2em}3,3\hspace{0.2em}\)} のみ \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}n=1,2\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) で重複している)について実際に計算すればよいことがわかります.すると次のような表になります.

   {\(\hspace{0.2em}l,m\hspace{0.2em}\)}                                                                   \(\hspace{0.2em}A_{lm}\hspace{0.2em}\)                                                               
{0,0} \(\hspace{0.2em} (f''+2f'(f'-g'))e^{2(f-g)} \hspace{0.2em}\)
{0,1} \(\hspace{0.2em}0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{1,1} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}g''\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{1,2} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{1,3} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{2,2} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}(2rg'-1)e^{-2g}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{2,3} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{3,3} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}(2rg'-1)\sin^2\theta e^{-2g}+\sin^2\theta-\cos^2\theta\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)

対角項しか残らない,かなり都合のよい形になりました.

続いて \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}B_{lm}=\Gamma^n_{ni}\Gamma^i_{lm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) について. \(\hspace{-0.2em}\Gamma^n_{ni}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) は \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}i=1,2\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) でしか有限な値を持たないことが既にわかっていて,さらに \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\Gamma^i_{lm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) の \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}i\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) によってまとまった表は手元にあるのでこれまた簡単に非零な値を持つ {\(\hspace{0.2em}l,m\hspace{0.2em}\)}の組が6つとわかります( \(\hspace{-0.2em}\Gamma^n_{lm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) の \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}n=1,2\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) にある6つ) . これを表にすれば( \(\hspace{-0.2em}A_{lm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) との統一性持たせるために, \(\hspace{-0.2em}n=0,4\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) に対応する {\(\hspace{0.2em}l,m\hspace{0.2em}\)} についても枠を作っておきます)

   {\(\hspace{0.2em}l,m\hspace{0.2em}\)}                                                              \(\hspace{0.2em}B_{lm}\hspace{0.2em}\)                                                          
{0,0} \(\hspace{0.2em} (f'+g'+\frac{2}{r} )f'e^{2(f-g)} \hspace{0.2em}\)
{0,1} \(\hspace{0.2em}0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{1,1} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}(f'+g'+\frac{2}{r})g'\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{1,2} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\frac{1}{r}\cot\theta\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{1,3} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{2,2} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}-r(f'+g'+\frac{2}{r})e^{-2g} \hspace{0.2em}\)
{2,3} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{3,3} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}-r(f'+g'+\frac{2}{r})\sin^2\theta e^{-2g}-\cos^2\theta\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)

さらに \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}C_{lm}=-\partial_{l} \Gamma^n_{nm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) について.これは本当に簡単で \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}m=1\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) のときこれが \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}r\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) のみの関数, \(\hspace{-0.2em}m=2\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) のときこれが \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\theta\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) のみの関数であることから非零な値を持つのは {\(\hspace{0.2em}l,m\hspace{0.2em}\)}\(\hspace{0.2em}=\hspace{0.2em}\){\(\hspace{0.2em}1,1\hspace{0.2em}\)}\(\hspace{0.2em},\hspace{0.2em}\){\(\hspace{0.2em}2,2\hspace{0.2em}\)} とわかります.表にするまでも無いですが,これもまた \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}A_{lm},B_{lm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) との統一性のために8枠用意しましょう.

   {\(\hspace{0.2em}l,m\hspace{0.2em}\)}                                                      \(\hspace{0.2em}C_{lm}\hspace{0.2em}\)                                                  
{0,0} \(\hspace{0.2em}0\hspace{0.2em}\)
{0,1} \(\hspace{0.2em}0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{1,1} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}-f''-g''+\frac{2}{r^2}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{1,2} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{1,3} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{2,2} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\frac{1}{\sin^2\theta}\hspace{0.2em}\)
{2,3} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{3,3} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)

最後に\(\hspace{0.2em}D_{lm}=-\Gamma^n_{li}\Gamma^i_{nm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) について.ここまで色々工夫をしてきたのに最後の最後で申し訳ないのですが,自分にはこれが非零な値を持つときの組の条件がぱっと思いつきません.が,ともかく他3つと同様に8つの {\(\hspace{0.2em}l,m\hspace{0.2em}\)} についてのみ調べればいい事わかります.というのも,これまでの3つがそれ以外の組で0だったので,もし有限な値になると \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}R_{mn}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) にそのまま残り \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}R_{mn}=0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) を満たさなくなるためです. 表にすると次のようになります.

   {\(\hspace{0.2em}l,m\hspace{0.2em}\)}                                                      \(\hspace{0.2em}D_{lm}\hspace{0.2em}\)                                                  
{0,0} \(\hspace{0.2em}-2f'^2e^{2(f-g)}\hspace{0.2em}\)
{0,1} \(\hspace{0.2em}0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{1,1} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}-f'^2-g'^2-\frac{2}{r^2}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{1,2} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}-\frac{1}{r}\cot\theta\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{1,3} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{2,2} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}-\cot^2\theta+2e^{-2g}\hspace{0.2em}\)
{2,3} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}2\sin^2\theta e^{-2g}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)
{3,3} \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}2\cos^2\theta\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\)

Ricciテンソルの計算2

これまで求めた \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}A_{lm},B_{lm},C_{lm},D_{lm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) を足しましょう. \(\hspace{-0.2em}B_{lm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) と \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}D_{lm}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) には非対角項が残っていましたが,ちょうど打ち消し合います.さらに恒等式

$$ \begin{align*} \frac{1}{\sin^2\theta}-\cot^2\theta=1 \end{align*} $$
などを用いるとEinstein Eq.は次のようになります.
$$ \begin{align*} R_{00}&=e^{2(f-g)}\left(f''-f'g'+f'^2+\frac{2}{r}f'\right)=0\\ R_{11}&=-f''+f'g'-f'^2+\frac{2}{r}g'=0\\ R_{22}&=1+e^{-2g}(rg'-rf'-1)=0\\ R_{33}&=\sin^2\theta\{1+e^{-2g}(rg'-rf'-1)\}=0 \end{align*} $$

これを整理すると

$$ \begin{align*} &f'=-g'\\ &1-r(e^{-2g})'-e^{-2g}=0 \end{align*} $$
が得られ,それぞれ任意定数 \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}a,b\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) を残して一般解
$$ \begin{align*} &g=-f+\frac{b}{2}\\ &e^{-2g}=1-\frac{a}{r} \end{align*} $$
を得ます. \(\hspace{-0.2em}b=0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) にしてもよく(ここはよく理解していません),すると初めに与えたSchwarzschild計量における線素は定数 \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}a\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) を残して

$$ \begin{align*} \mathrm{d}c\tau^2=\left(1-\frac{a}{r} \right)\mathrm{d}ct-\left[\left(1-\frac{a}{r}\right)^{-1}\mathrm{d}r^2+r^2\mathrm{d}\theta^2+r^2\sin^2\theta\mathrm{d}\phi^2\right] \end{align*} $$
とわかりました.

aの決定,Schwarzschild半径

特定の条件で重力場中の測地線の方程式をかなりナイーブに解くと重力ポテンシャル \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\phi\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) について次のような計量 \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}g_{00}\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) に関する式が得られます1

$$ \begin{align*} g_{00}=1+\frac{2\phi}{c^2} \end{align*} $$

ニュートン力学から \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\phi\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) は簡単に求まり

$$ \begin{align*} \phi(r)=-\frac{GM}{r} \end{align*} $$

です.これと上のSchwarzschild計量を比較することで \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}a\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) が決定され

$$ \begin{align*} a=2\frac{GM}{c^2} \end{align*} $$

となります.この \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}a\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) を特にSchwarzschild半径と呼び,物理的には \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}r\to a\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) の極限で \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}g_{00}\to 0\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) になり,光ですらその境界線を越えることはできない(外から内への侵入も,内から外への脱出も不可)ことから事象の地平面が存在し,Schwarzschildブラックホールを形成していると考えられます.

結び

最初は歩夢のCPを話していたはずなのに,気が付いたらSchwarzschild半径を導出している,そんな記事があってもいいと思います.

脚注

  1. たとえばこのサイトが参考になるかもしれません.計量の取り方の違いにより\(\hspace{0.2em}\pm 1\hspace{0.2em}\)倍ズレていますが本筋に影響はありません.