Advent Calendar

Physics Lab. 2022 Advent Calendar 6日目 トポロジカル物性班

トポロジカル物性班班長
⚠記事の内容は学生個人の見解であり、所属する学科組織を代表するものではありません。

挨拶

こんばんは.理学部物理学科3年のくてです.Physics Lab. 2022ではトポロジカル物性班の班長をやらせていただいてます.養命酒1に救われています.よろしくお願いします.

何の班?

物性分野のうち,物質のトポロジカルな側面に関連した内容を学ぼうぜ,という班です.またトポロジカル物性に関係ないものでもええやん,という緩いノリでも活動しているつもりです.具体的な班の活動としては強相関電子系,超伝導,その他のグループに分かれて各々の興味や目的に別れて学んでいます.また展示で発表する実験2のための準備も進めています.

物質のトポロジカルな側面

物質の電子状態は波動関数で記述されます.その波動関数がHilbert空間上で非自明なトポロジーを持つような物質の存在が実験と理論から確かめられています.トポロジーとは一口に言うなら「形」を意味します.「マグカップとドーナツは穴の数が一致するので同じとみなす」という説明を耳にした方は多いことと思います.それです.波動関数を波数空間という抽象的な空間で見てやると「形」によって分類することができるのです.これが「トポロジカルなんとか」のお気持ちです.

トポロジカル不変量の一例(2バンド1次元系の場合)

波動関数の「形」がトポロジーだと雑に言いました.ではトポロジーを分類する具体的な指標を見てみましょう.あくまで紹介なのでさらっと流します.

絶縁体を考えます.絶縁体の1つのバンドのみが占有状態にあるとき,電気分極\(\hspace{0.2em}P_\rho\hspace{0.2em}\)はBerry接続\(\hspace{0.2em}a(k)\hspace{0.2em}\)3を用いて

$$P_\rho = \int_{-\pi}^\pi \frac{dk}{2\pi}a(k)$$

と表せます.[1]これを2バンドの場合に拡張します.

2バンド1次元系を考えましょう.Hamiltonianが周期\(\hspace{0.2em}T\hspace{0.2em}\)を持ち,時間反転対称性を持つ,すなわち

$$H(t+T) = H(t) \\ H(-t)=\Theta H(t)\Theta^{-1}$$

4という対称性の課された系で考えることにします.2バンドで考えるのでBerry接続は一般に\(\hspace{0.2em}2\times 2\hspace{0.2em}\)行列で表されるので

$$a(k) \to \bm{a}_{\alpha\beta}(k)$$

となります.特に,対称性を先述のように課しているの積分は

$$P_\rho = \underset{\coloneqq P_1}{\int_{-\pi}^\pi \frac{dk}{2\pi}a_{11}(k)} + \underset{\coloneqq P_1}{\int_{-\pi}^\pi \frac{dk}{2\pi}a_{22}(k)}$$

のように簡単な形になります.つまり各バンドからの寄与\(\hspace{0.2em}P_1, P_2\hspace{0.2em}\)の和の形に直せます.このように現れてきた\(\hspace{0.2em}P_1, P_2\hspace{0.2em}\)の差\(\hspace{0.2em}P_\theta\hspace{0.2em}\)とBloch関数\(\hspace{0.2em}\ket{u_{\alpha,k}}\hspace{0.2em}\)5を用いて定義される行列\(\hspace{0.2em}w_{\alpha,\beta}\hspace{0.2em}\)

$$P_\theta = P_1 - P_1, w_{\alpha,\beta} = \bra{u_{\alpha, -k}}\Theta\ket{u_{\beta, k}}$$

を考えてやりましょう.するとなんやかんやあって

$$P_\theta = \frac{1}{i\pi}\log\left(\frac{\sqrt{w_{12}(0)^2}}{w_{12}(0)} \cdot \frac{w_{12}(\pi)}{\sqrt{w_{12}(\pi)^2}}\right)$$

という表式に変形できることが示せます.\(\sqrt{w^2}/w\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\) の形になっているので,\(\log\hspace{0.2em}\)の中身は\(\hspace{0.2em}\pm1\hspace{0.2em}\)になります.したがって偏角を\(\hspace{0.2em}0\leq\theta\leq2\pi\hspace{0.2em}\)に制限すれば,\(P_\theta = \log(\pm1)/i\pi = 0, 1\hspace{0.2em}\)となります.この表式のもとで時刻\(\hspace{0.2em}t=0\hspace{0.2em}\)から\(\hspace{0.2em}t=T/2\hspace{0.2em}\)の間の\(\hspace{0.2em}P_\theta\hspace{0.2em}\)の変化分\(\hspace{0.2em}\Delta\hspace{0.2em}\)

$$\Delta = |P_\theta(T/2) - P_\theta(0)|$$

を見てやると,\(0\hspace{0.2em}\)か\(\hspace{0.2em}1\hspace{0.2em}\)というとびとびの値を取ることが確かめられます.この\(\hspace{0.2em}\Delta\hspace{0.2em}\)が今考えている系の「形」,すなわちトポロジーを分類する指標です.\(\Delta = 0\hspace{0.2em}\)の場合が自明な場合で,\(\Delta = 1\hspace{0.2em}\)の場合がトポロジカルな場合と呼ばれます.6この例の\(\hspace{0.2em}\Delta\hspace{0.2em}\)は\(\hspace{0.2em}0,1\hspace{0.2em}\)のニ値であり,\(Z_2\hspace{0.2em}\)指数と呼ばれています.

終わりに

堅苦しくなったのでこの辺にしておきます.つい最近年が明けた気がするのですが,もうクリスマスです.僕の中ではクリスマスは大きな鶏もも肉とショートケーキを堪能する日と決まっています.皆さんはどのようにお過ごしの予定でしょう.78気が触れないようにお過ごしください.

参考文献

  1. L. Fu and C. L. Kane: Phys. Rev. B 74 (2006) 195312.

  2. 『トポロジカル絶縁体入門』,安藤陽一,講談社

脚注

  1. 寝る前または食前に20 mL飲みましょう.一日3回が目安です.

  2. 乞うご期待!

  3. 波数空間におけるベクトルポテンシャルのようなもの.

  4. \(\hspace{-0.2em}\hspace{0.2em}\Theta\hspace{0.2em}\): 時間反転演算子.運動を逆再生させるもの.

  5. 実空間で単位胞の周期性を持つ波動関数.

  6. 物理的には,系の橋から橋へとスピンが流れる spin pumping という非自明な現象が発生するらしいです.

  7. 恋人と過ごすという変わった風習を持つ地域も存在する.

  8. 24日のアドベントカレンダーに思いを馳せながら.

作者紹介
くて
スマホの音ゲーは人差し指でプレイする派です.