Advent Calendar

ちょっとドバイ行ってくる

ドバイ紀行の振り返り
⚠記事の内容は学生個人の見解であり、所属する学科組織を代表するものではありません。

Physics Lab. 2022 Advent Calendar 20日目 ちょっとドバイ行ってくる

こんにちは!東京大学理学部物理学科3年のきんぐです。生物物理班でゼミしたり、本郷三丁目でバーテンダーしたり、東大ア式蹴球部の分析やったりしてます。

実はひょんなことから、10月末くらいに学科の授業を一週間ほどお休みさせていただいて、アラブ首長国連邦のドバイに行ってまいりました。帰国後、逃避してきた現実と無限課題の刃にズタズタにされていたのでなかなか振り返る機会がなかったのですが、折角の機会なので少し振り返ってみようと思います。1

そもそも何しに行ってんねん?

IACという、宇宙関連の国家機関、ビジネス、アカデミアに関わる人々が一同に集う国際会議に参加してきました。元はといえばサークルの先輩が一年生の時にJAXAの派遣で参加しており、めちゃめちゃオススメされていたのでずっといつか自分も行ってみたいと密かに憧れてました2

私は国籍の問題でJAXAの派遣には応募できなかったのですが、ドバイには縁があるし3、久しぶりに海外行きたいし、何より万博もやってるしで今年こそ行くしかない!となり自費渡航を決意しました。夏休みくらいから準備を始め、学科に交渉した結果、実験の日程やゼミの日程をずらして渡航をすることを許可していただけました(本当にありがとうございます)。

旅の間は本当に色んなことがあったんですが、文字に書き出すと半端ない分量になってしまうので、今日はドバイで本当にあったおもしろエピソード3選を紹介します!

第三位: SETIの懇親会

みなさんSETIって聞いたことありますか?地球外知的生命体探査(Search for Extra Terrestrial Intelligence)の略で、簡単に言えば宇宙人を見つけようとしてるぶっ飛んだプロジェクトです。SF作品でもよく題材にされている4ので、まともな科学者でそんなこと真面目にやってる人がいるのか?と疑問がよぎりますが、実はUCバークレーをはじめ、アメリカでは真剣に取り組まれているプロジェクトなんです5

IACでのSETIのセッション。フェルミのパラドックスとドレイク方程式について。

IACでのSETIのセッション。フェルミのパラドックスとドレイク方程式について。

日中にSETIの主宰するセッションがあり、面白そうなので参加してみたところ、夜に懇親会があるから来てみない?とお誘いをいただき、SETIの懇親会にお邪魔してきました。

懇親会の様子。海外は割とこんな感じみたいです(何とは言わないが)。

懇親会の様子。海外は割とこんな感じみたいです(何とは言わないが)。

正直、当時の僕はSETIと言えば「ヤバイやつのやってる変なプロジェクト」というイメージしかなく、野次馬根性で参加しました。ところが話を聞いてると、参加者はみな立派な経歴を持った研究者で話も極めてまともだし、教育にも力を入れていて学部生でNatureに論文が掲載された学生もいるし、NASAエイムズ研究所の元所長(!)までいるしで、想像を完全に上回る本気度を感じました。

特に面白いと感じたのはBreakthrough Initiativesというプロジェクトに関わっている人々で、これは太陽系外の恒星(プロキシマ・ケンタウリb)に向けてソーラーセイルをレーザービームを使って光速度の20%まで加速させようとしているプロジェクトです。もうなんか、とにかくぶっ飛んでますよね。彼らはこれをNon-profitの活動で行っていて、あの車椅子の天才ホーキングやFacebook創立者のザッカーバーグなど名だたるメンバーが支援して活動しています。

その他にも、複数の観測衛星から得られる情報を統合して天文学者の観測を支援する望遠鏡を開発している人など、新しい、そして面白いアイデアを持って実現している人が沢山いてとても楽しかったです。こういう一見変な、新しくて奇抜なことに対する許容度とそれにかける熱量の本気度が、やはり日本とは全然違うなと感じました。

複数の観測衛星から得られる情報を統合した望遠鏡

複数の観測衛星から得られる情報を統合した望遠鏡

僕自身も元々、宇宙と生物の両方ができる場所として理物を選んだ身なので、宇宙生物や生物物理、文明論や宇宙開発など様々な話ができてとても楽しかったです。

第二位: NASA JPLの所長と朝ご飯

IACでは3日目の水曜の朝に、NASA JPL(ジェット推進研究所)主催の学生向け朝ご飯セッションが開催されました。主に海外から来た若い学生向けの会で、諸事情あり3日目からの参加となった先輩と一緒に私はこの会に参加しました。

ふらっと会場に入って、いくつかのテーブルがあったのですが、せっかくなら偉い人と喋りたい!ということで、真ん中の方にある良さそうなテーブルを選んで座りました。このときはまだどういう人が来るか知らなかったので普通にしていたのですが、そろそろ開会かなと思っていたら、同じテーブルに座っていた3人が壇上に上がってスピーチを始めました。

NASA JPL所長のスピーチ

NASA JPL所長のスピーチ

このときようやく、自分たちが不用意にもVIP中のVIPが集まるテーブルに座ってしまったことが判明し、正直めちゃめちゃ焦りました(笑)。でも喋ってみると、彼ら彼女らも元は大学の教授などアカデミックな背景を持っていて学生との交流に慣れているのか、とても気さくに自分たちのしている活動や研究について話してくれたり、興味のある分野の様々な人を紹介してくれたりしました。どんなことでも、話せるチャンスがあったら勇気を出して声をかけるのはやはり大事だなと感じました。

個人的には、国籍の問題など将来の決断に関わる重要な話を色々できたので非常に良かったです。同じテーブルに座っている人が誰かわかった時の衝撃があまりにも大きかったので、第二位に選びました。

第一位: 同級生と2年ぶりに遭遇

これが一番意味がわからないやつです。ドバイに入国後4日目くらいにInstagramを見ていたら、高校の同級生がなぜか同じタイミングでドバイに来ていることが判明しました。

当然会おうということになり、その方が働いているというGlobal Villegeに行って色々楽しんできました。様々な国の文化を集めた巨大なテーマパークで、そこの日本エリアでインターンしながらオンラインで授業を受けて、さらに就活をしているらしいです(キャパがすごすぎて笑った)。

Global Villageの様子

Global Villageの様子

成人式もなく、その方とはかれこれ卒業以来会っていなかったので、卒業以来2年ぶりの再開がまさかのドバイという。世界って狭いなと感じました。圧倒的に意味わからないエピソードなので、第一位に選びました。

おわりに

当時はちょうどデルタ株が落ち着いてきた頃でなんとか無事に帰国できましたが、またオミクロン株が流行ってきちゃいましたね。コロナ禍の中の出国と入国ということで、様々な面で大変さもありましたが、隔離などのプロセスを経験する中で水際対策の難しさを感じましたし、それに関わる人々への感謝を忘れちゃいけないなと思いました。

はやく元の世界が戻ってくることを心から願ってます。

脚注

  1. 理物の刃はアドカレの恒例行事になりつつある。

  2. JAXAは毎年数名の学生を派遣しています(今年はコロナで直前に中止)。

  3. 実は一年生の頃にもSTeLAというイベントでドバイに行ってました。

  4. 私は無限に「三体」を推しています。半年以上前に読了したのにいまだ他に読了した人がいなくて悲しいです。みんな読んで!

  5. 東大でも最近、「宇宙普遍生物学セミナー」なるものが開催されており、SETIプロジェクトが話題にあがってました。

作者紹介
きんぐ
特技は、肘を逆に曲げること。