BEC班
極低温で現れる不思議な世界
私たちの暮らす世界の温度は大体15°Cぐらいです。でも、北極や南極のようにとても低いところもあります。そこでの景色は、普段私たちが見る景色とは異なります。ここで、温度がもっと低い場所ではどうなるか、という疑問が出てくると思います。しかし、温度をどんどん下げていこうとするとある限界に達します。つまり、温度にはそれよりも下げることのできない限界の温度、絶対零度(約-273°C)というものが存在するのです。その付近で現れる現象は、私たちが普段暮らしている常温の世界の感覚とはさらに異なり、その分魅力にあふれています。その魅力的な現象の一つが、「BEC」(ボースアインシュタイン凝縮)と呼ばれる現象です。私たちBEC班は、そのBECに関連した活動を行ってきました。
BECはその名前からも想像されるように、あのアインシュタインが1925年に予言したもので、1995年に実験的に実現しました。その実現に対してノーベル賞も出ています。この現象は簡単にいうと、ものの集団の動きがそろう、現象です。常温ではものの動きはそろっていません。そのため、ものの動きがそろうBECでは、普段とは全く違った振る舞いが見られるのです。例としては超流動や超伝導といった現象があり、粘性がなくなったり電気抵抗がなくなったりと、特異な性質を示します。
レーザーで冷やす!?
このBECは絶対零度付近で起こる現象ですが、なんとその温度は絶対零度から0.0000001°Cだけ上なのです!自然界にも存在しないようなこの極低温は一体どうやってつくるのでしょうか?答えから言ってしまうと、レーザーを使って冷やすのです。レーザーは、レーザーポインターやブルーレイディスクなど私たちの身の回りで使われている光です。レーザーと聞くと、ものを焼くことができるような、どちらかといえば熱いイメージがあると思います。しかし、そんなレーザーでもうまく調節してあげれば、逆にものを冷やすこともできるのです。これは「レーザー冷却」と呼ばれ、気体の原子などを極低温まで(しかも一瞬で!)冷やすことができます。
私たちBEC班はそんなレーザー冷却を用いて、気体のルビジウム原子の冷却に挑戦しました。磁石の力も借りて、ルビジウムを絶対零度から約0.0001°Cのところまで冷却しました。BECにはまだ届きませんが、それでも想像を絶する温度です。BECやレーザー冷却のより詳しい説明に加え、極低温まで冷やされた原子の動画や写真も用意していますので、ぜひお越しください。
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※より詳しい解説をPDFでご用意しています。こちらからご覧ください。
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