PhysicsLab. 2016 BLOG

2016年1月の記事

2016.01.25. Mon.
Category: BEC班
はじめまして、BEC班の班長をしている萩原と申します。最近は冬らしい寒い日が続いていますね。気温が低くなると、吐く息が白くなったり雪が降ったりと普段とは違うことが起きると思います。ここで、もっと温度が低くなったらどんな現象が見られるようになるのか、それを突き詰めると不思議な現象がたくさん現れます。その中でもとりわけ非常に低い温度で現れ、また、とりわけ興味深い現象があり、それが「BEC」と呼ばれる現象です。

BECはボーズアインシュタイン凝縮(Bose Einstein Condensation)の英語の頭文字を取ったもので、名前の一部にもなっているあの有名なアインシュタインが予言したものです。BECとは簡単に言うと、「多くのものからなる集団の動きが極低温でそろうようになる」現象です。

例えば、私たちの身の回りにある液体には粘り気(粘性)があります。ハチミツや油はもちろんですが、さらさらに思われる水にも小さいながら粘性はあります。この粘性は、液体を構成する粒子の動きがバラバラで摩擦があるために生じます。しかし、ある温度以下まで冷やされBECが起こると、構成粒子は完全にそろって動くようになります。このことは粘性の元となる摩擦が生じないことを意味し、液体は完全にさらさらになります。手で触れようにも何も感じないでしょう(そもそも温度が低すぎて手を入れるのは危険ですが)。この状態の液体はもはや私たちが普段目にする液体とは性質が違っていて、入っているコップをひとりでに這い上がっていくといった奇妙な挙動を示します*

なかなかイメージがわきにくい現象ですが、普段目にすることのない現象ですからある意味当然かもしれません。というのも、BECは低温で起こるといいましたが、実は絶対零度(-273 °C)近くまで冷やさなければならないのです! 私たちBEC班はそんな非日常を実験室の中で実現しようと活動しています。五月祭のPhysicsLab. 2016で、極低温で現れる不思議な世界にぜひ触れてみてはいかがでしょうか。

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*この状態は「超流動」と呼ばれています。動画で不思議な挙動が確認できます。
2016.01.14. Thu.
はじめまして。PhysicsLab. 2016の副統括の桶作愛嬉と申します。皆さんに楽しんで頂ける企画になるよう全力を尽くしますので、今後ともよろしくお願いします!

今回は、私が班長を務めている真空ゆらぎ班のご紹介です。

「真空」という言葉を、皆さんは聞いたりあるいは実際に使ったりしたことがあると思います。何もない、という意味を持つ言葉です。例えば、食品の鮮度を保つために利用される真空パックや、中身の温度を保つための真空魔法びんなどがありますね。真空とは、日常によく浸透した言葉だと思います。

しかしながら、現代の物理学では、真空とは単に「何もない」という状態ではありません。それは、非常に小さな小さな世界において、私たちの想像とは違った様相を呈します。ミクロな世界の法則である量子力学によれば、真空とは何もない状態ではなく、わずかながらにエネルギーが存在しているのです。

しかも、よく調べてみると、このエネルギーは微妙に変化する、つまり揺らいでいるということが知られるようになりました。このことが引き起こす面白い現象に、「カシミール効果(Casimir effect)」*があります。

この「カシミール効果」を私たち真空ゆらぎ班では検出することを目標に活動をしていきます。真空と量子力学が生み出す不思議な世界を、ぜひご覧になってください。

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*あるいは「カシミール力(Casimir force)」とも言います。
2016.01.07. Thu.
こんにちは。PhysicsLab. 2016副統括をつとめる高野佑磨と申します。私は副統括と透明マント班の班長を兼任させて頂いております。そこで今回は、班長をつとめる透明マント班の紹介をしていきたいと思います。

誰しもが一度は憧れを抱いたことがあるであろう透明マント。それは、冠ると周りの人から自分の姿が見えなくなるという素晴らしいマントです。私も、その透明マントに憧れを抱いた者のうちのひとりです。そこで、透明マントに関する実験をしたいと言うのがこの班を立ち上げたきっかけでした。

そもそも、「透明」とはどういうことでしょうか。広辞苑第二版補訂版によると

   物体が光をとおすこと。

となっています。これは英語で言うところのtransparentですね。この「透明」には、ガラスや水などが当てはまります。しかし、私たちはガラスや水を認識、「目で見る」ことができますので、「目で見えない」透明マントの性質とは違う訳です。透明マントの「透明」とは、「目で見えない」、英語で言うとinvisibilityを指しているのです。

私たちは普段、経験則から何もなければ見えるであろう状態を予測してものを見ていると考えることができます。ガラスや水を認識できるのは、それらが透明であっても、何もない状態とは見え方が違うからです。これを逆に利用して、何もない状態と同じように見えていれば、何もないと感じ取る訳です。このことを用いたのが透明マントの技術であり、"Cloaking"と呼ばれています。

透明マント班では、"Cloaking"に関する実験の展示を行いたいと考えています。ぜひ、五月祭当日、"Cloaking"の世界を堪能してください。
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