PhysicsLab. 2016 BLOG
2016.04.12. Tue.
Category: その他
こんにちは。全体統括です。本日、ウェブサイトを公開いたしました。このブログ同様、PCとスマホのどちらでもご覧いただけます。
日時や場所の他、各班の内容の解説なども掲載しています。今後ますます充実した内容にしていく予定です。是非アクセスしてみてください。

カレンダーを見てみると五月祭当日まで残すところ約一ヶ月。各班着々と準備が進んでいるようです。5月14日(土)、15日(日)は東京大学理学部1号館 PhysicsLab. 2016 へ!
2016.04.09. Sat.
こんにちは。今回は3回目の透明マント班の記事になります。前回の記事では、リング状の物体を用いて、普通のガラスと透明マントの違いを、数値シミュレーションのアニメーションによって見ていただきました。まずは、それについての復習をしてみましょう。

前回は赤と青の縞々の線を用いて光の進み方について見てみました。それを、よりわかりやすい図で見てみましょう。

これは、真空中で光が進む様子を表しています。それぞれの黄色い線は光線を表していて、矢印の向きに光が進んだんだと考えてください。例えば、暗い部屋の中で懐中電灯を灯すと、光の道筋が見えるかもしれません。あるいは、太陽が燦々と輝く日中にカーテンを閉めると、カーテンの隙間から太陽光線が見えることでしょう。上の図の黄色の線はそれらの光線を表した模式図になっています。

さて、次に、前回の記事で見せた、透明マントを用いた時の光線の模式図を見てみましょう。

リングの形をした透明マントの中には赤色の物体が置いてありますが、周りに置いた透明マントのおかげで、物体に光が当たることはなく、何もない真空中の時と同じように光が進んできたように見えるわけです。リングの中をよく見ていただけるとわかると思いますが、光線はリングに沿って曲がって進んでいるのです。このように曲がった光の経路(光路)を作り出すことによって、透明マントは実現できるのです。

それでは、このように曲がった光路を実現するにはどうしたら良いのでしょうか。

皆さんもよく知っているように、光はまっすぐに進みます。それが自然の摂理なのです。つまり、曲がった光を作り出すことは、一見、自然の摂理に反しなければならないのです。一方で、皆さんは光が「折れ曲がる」現象はよく知っているでしょう。

これは、光の屈折と呼ばれる現象で、屈折率の違う物質中に光が入射するときに起きる現象です。実は、光の屈折は、カメラのレンズやメガネのレンズなど、様々なところで利用されている、とても身近な現象なのです。そしてこの屈折現象を用いることによって透明マントを実現することができるのです。なんだか夢みたいな透明マントの話も、少し身近に感じてきたでしょうか。

それでは最後に、光の屈折現象を用いて透明マントを実現する方法を説明しましょう。先ほどは屈折率の違う2つの領域での光の進み方を見ました。今度は、屈折率の異なる領域を10個用意してみましょう。

10個の領域を進む最中、光は屈折を繰り返します。すると、図のように滑らかに曲がっているように見えてくるのです。さらにこの領域を、100個、1000個、…とどんどん細くしていけば、光の折れ曲り方はどんどん滑らかになっていき、「曲がった」光が実現できてしまうのです。そして、「曲がった」光を作り出すことが、上のような透明マントの実現につながるのです。
こんにちは。
物理ショー班2回目のブログは、今年のショーのテーマである波と振動についてです。

「波」と聞くと海の波を想像する方も多いかと思いますが、物理の世界では他にもさまざまなところに「波」が登場します。

たとえば、音は空気の振動が伝わっていく現象で、波の一種です。ギターなどの弦楽器を弾くときを考えてみると、弦の振動によって周りの空気の振動が引き起こされ、それが音として伝わります。音が振動であることは、喉に手を当てながら声を出すことでも確かめることができます。私たちは空気の振動を音として感じているのですね。
また、光も波の性質(波動性)を持っています。とはいえ、音のように簡単に確かめられるものではありません。光の波動性を確かめる有名な実験の1つに「ヤングの実験」があります。これは、光源から出た光を2つのスリットに通すとスクリーンに縞模様が見えるという実験で、それぞれのスリットから出た光の波が干渉することで説明することができます。


最近の話題では、アメリカにある検出器「LIGO(ライゴ)」が重力波の検出に成功した、という発表が2016年2月になされました。このブログでは重力波について詳しく説明することはできませんが、重力波は「空間のゆがみ」が波として伝わる現象で、アインシュタインの一般相対性理論によってその存在が予言されてきました。重力波はブラックホールが形成される過程などで生じると考えられています。LIGOによる重力波の検出はアインシュタインが一般相対性理論を発表してからちょうど100年ということもあり、大きく報道されました。

このように「波」は物理のいたるところに顔を出しますが、これらは物理に登場する波のほんの一部に過ぎません。PhysicsLab. 2016物理ショーでは「波の世界を見てみよう」をテーマにに、光や音などの身近な波から最先端の物理まで、実験を通して体感していただけるようなプログラムを用意しております。詳細は次回のブログでご紹介します。ぜひお楽しみに。
Category: 加速器班
こんにちは、加速器班の二回目です。

前回は、加速器の概要について書かせていただきました。今回は、実際に作るにあったって課題となることを書きたいと思います。加速器の制作に当たって加速機構の設計だけが問題になるわけではありません。加速機構の種類については前回お書きした通りです。

まず、真空についてです。素粒子というのは、多くの場合反応しやすいものです。今回僕らが使おうとしている電子線は別名ベータ線と呼ばれるもので、人間が浴びると有害つまり身体の組織と反応しやす性質を持っています。このため、待機中では空気と反応して目標の素粒子を確認することができません。そこで、空気を抜こう!という話になります。大気圧はだいたい105Paですが、現在最先端の研究では10-9Paまで気圧を下げてしまうこともあります。今回の実験では10-3-10-4Paぐらいの気圧を確保できれば大丈夫です。

次に、イオン源です。素粒子というのは、科学の実験のように電子試薬瓶があるわけではありません。自分たちで作り出す必要があります。電子を作る方法は大きく分けて3つあり、1つめ金属を温める方法、2つめ放電を起こす方法、3つめ光を使う方法があります。今回は1つめの金属を温める方法を用います。具体的には、タングステンのフィラメントに電流を流して熱します。イメージとしては豆電球のような感じです。

今度は、電源です。実験で用いるためには、正確な電圧、電流の値を測定また目標に近づくように調整する必要があります。よって乾電池で代用したりすることは難しいです。また、大きな電圧、大きな電流を流すため専用の装置を使わないと電源が壊れてしまったり、目標の電圧が出なかったりします。

最後は、検出器です。研究の多くは検出器にかかっていると言っても過言ではありません。検出器に多くの影響を与えるのが電磁波ですが、加速器ではこれがたくさん出ます。よって、電磁波に注意して検出器を作らなければなりません。

以上のように、加速器と言いつつ加速機構自体よりも他のところに関する作業が多く、実は大変です。高校の問題で「電子を出せば」、「容器内は真空にした」などと書かれているところが実際に実験するときは大変です。

こういった、器具についても五月祭では展示する予定なので是非ご覧になってください。
Category: 計算機
お久し振りです、計算機班です。
私達計算機班は班員一人ひとりがそれぞれ自分のプログラムを作っています。
今回は現在制作中のプログラムの一部を紹介したいと思います。(五十音順)


【イジング模型】(古川)
皆さんご存知のように磁石に鉄を近づけると引き寄せられます。それではこの磁石を炎で加熱し続けるとどうなるでしょうか。実はある温度を越えたところで急に磁力がなくなってしまいます。この温度をキュリー点といいます。このような磁石の振る舞いをミクロな視点から見るために考え出されたのがイジング模型です。
物質を構成する原子はひとつひとつ小さな磁石の性質を持っています。この小さな磁石は上か下かのどちらかを向いており、プログラムは100×100個の原子が並んで上または下を指している状態を白黒で表現しています。磁石はある温度を持っていますので、熱による揺らぎから小さな磁石は常にパタパタとひっくり返っています。これだけではただの磁石の集まりであまりおもしろくありません。そこで、この小さな磁石に隣の磁石と同じ方向を向こうとする性質を持たせてみます。これがイジング模型です。これで一体なにが起こるのでしょうか。
温度がゼロで熱による揺らぎがまったくない状態では、すべての磁石が同じ方向を向き全体として磁石の性質を示します。しかし、温度が高くなっていくとだんだんひっくり返る磁石が多くなっていきます。それでもまだ同じ向きに並んだ磁石の方が多く、全体として磁石になっています。ところが、ある温度を越えると熱によるひっくり返しの効果が同じ向きに並ぼうとする効果を上回ります。すると小さな磁石たちは混乱を極め、お互いに打ち消しあって全体としては磁石でなくなってしまうのです。
私はこれを再現したプログラムを作りました。五月祭当日では右のスライダーで温度を変えて、小さな磁石の向きがどのように変わっていくかを確かめてみてください。


【宇宙シミュレーション】(森脇・周)
宇宙理論の研究現場においては、実際の観測結果とシミュレーションの結果を照らし合わせることにより理論の検証が行われることもあります。
今回の五月祭の展示では、ビッグバン当初ほぼ一様に質量が分布していた状態から星や銀河が形成された過程をシミュレーションにより見てみようと思います。このシミュレーションでは、たくさんの粒子によって密度分布を表し、それらの相互作用として重力と圧力を考えます。
図は粒子1000個でシミュレーションを行ったものです。密度が大きすぎると全粒子が中心に固まってしまいますが(図左上)、適当な大きさの時には所々に粒子の集まる場所ができる可能性があり、これが初期の星になると考えることができます。
※t=0.png(図右上)、t=50.png(図左下)、t=100.png(図右下)は粒子の位置の時間変化。t=100.png などは分布に構造の片鱗が見えている?まだ試作段階。


【交通流シミュレーション】(羽柴)
渋滞はなぜできるのか?渋滞はいつできるのか?そもそも、渋滞とは何なのか?
車の流れに対しては、いわゆる普通の物理で使う方程式はほとんど使い物になりません。たとえば、後ろの車は前の車が遅いと自分も減速しなければなりませんが、前の車は後ろの車が迫ってきたからといって加速する義務はありません。つまり、前の車と後ろの車は対等ではないのです。こういう、「対等じゃない(非対称)」というのが物理学や数学はとても苦手です。そこで数値解析(シミュレーション)の出番となるわけです。
このシミュレーションでは現実に起こっていることをコンピュータ上に再現する為に、必要最小限のルールだけを抜き出す「モデル化」が肝になります。今回はあまり表に出てこないこのモデル化の過程についても展示しようと思っています。モデルが進化するにつれてコンピュータの中に次第に鮮明な車の流れが浮かび上がるのをご覧下さい。(画像はきわめて簡単な「トイモデル(おもちゃのモデル)」と呼ばれる類のモデルです。)

ここに挙げたもの以外についても今後紹介予定です。
お楽しみに!
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