東京大学 大学院理学系研究科・理学部

2010年度のPhysics Lab.
企画紹介
概要

「Physics Lab. 2011」とは東京大学理学部物理学科の有志が以下の5つの班(詳細は活動紹介をご参照ください)に分かれ、各班毎に独自の研究を行い、当日の演示や資料の配布を以て、物理の楽しさを発信しよう、という企画です。今年度のテーマは「あるよ、意外な発見。」ということで、身近にある物理現象も扱いながらさまざまな物理の側面をお伝えしたい、と考えております。

  液体班 液体やソフトマターなどの、未開拓な領域の物性物理学に挑戦します。
  粉体班 粉体力学を中心とした非平衡統計物理を扱います。
  低次元物性班 低次元物性について現代的な手法を取り入れながら研究します。
  宇宙班 Spark Chamber を作成し、関連する物理実験を行います。
  メタマテリアル班 メタマテリアル、今回は特に負の屈折率を持つ物性について研究します。

なお、活動資料(ポスター、研究解説等)はこのWEBページ上の資料に順次アップしてゆきます。



代表挨拶
オーロラ

一般に『物理』というと「小難しい」「数式がいっぱい」「つまんない」とか親しみづらいイメージを持たれがちですが、たとえば、私たちの生活に必須な電化製品は電磁気学という『物理』の応用であったり、虹や夕焼け、オーロラといった美しい自然現象も『物理』で説明がついたり、一見無関係に見える経済学や生物学にも『物理』的手法を用いた研究がなされたり、などなどと『物理』自体の「親しみづらい」イメージとは裏腹に私たちのまわりにはたくさんの『物理』が溢れています。そこで、私たちはこのPhysics Lab. 2011 という企画を通じて『物理』の「おもしろさ」や「美しさ」を伝え、より皆様に『物理』を身近なものに感じてもらおう!!ということを一番の目的として活動しています。今年度は特に「あるよ、意外な発見。」というテーマを掲げ、ふとすると見逃してしまいそうな、しかし、身の周りに溢れている『物理』を発信してゆきたい、と考えております。

『物理』のおもしろさを伝える、という第一目的の一方で、Physics Lab. ではもうひとつ、学生主導による本格的な研究活動を行うという理念も持って活動しています。普段、大学などの教育現場で行われる実験や演習などといったものは、あくまで「教育」が目的であるがために、実際の研究現場で現れるような「誰も答えを知らない問題に真摯に取り組む」という点は重視されないのが現状です。つまり、学生は先生方から「与えられた」「答えの明らかな」問題や課題を受動的に取り組む機会しか持ちえず、学生主体の柔軟なアイデアに基づく「誰も答えを知らない」問題や課題に対して「気が済むまで考えて、自分で答えを導く」という実際の研究現場において本質的な過程を行うチャンスがあまりありません。そこで、Physics Lab. では、テーマ策定から実際の実験、解析、発表といった一連の研究活動をすべて学生主導で行い、学生主導による本格的な研究活動を行う、という理念を達成すべく日夜努力を重ねています。

研究の様子

しかし、学生主導であるから、といって研究のレベルを落とすわけではありません。例えば、宇宙班が企画している「パリティの破れ」を見る実験は1950年代にノーベル賞をもたらした非常にセンセーショナルなテーマであったり、低次元物性班の研究テーマは高温超電導体や2010年にノーベル賞を受賞したグラフェンの研究とも密接に絡んできます。他にもメタマテリアル班が作成を目指している音響メタマテリアルであったり、粉体班の粉体のパターン形成や粉体マクスウェルの悪魔、液体班のイオン液体の局所構造の測定やケイ効果など、未だ結果のあきらかでない、最先端の研究分野にメスを入れるような非常にレベルの高い実験が揃っています。

大層な研究テーマだなぁ、とか、まったく身近に思えない、などなどと思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこれらのテーマは一言で言ってしまえば非常に単純で、身近なものたちばかりです。たとえば(非常に乱暴な言い方になってしまいますが)液体班のケイ効果なんかはシャンプー垂らしているだけですし、粉体班の実験は粉をゆすっているだけです。しかし、こんな身近にあるものでも、本気で研究に取り組めば、非常におもしろい・美しい現象を示してくれたり、一見単純なのにも関わらず難解な理論が必要になったり、と『物理』の奥深さを示してくれます。

大変、長々とした挨拶となってしまいましたが、上記のような枠組みで、物理のおもしろさを発信するということを一番のモットーとして、ご来場の方々すべてに『物理』を楽しんでいただけるような企画を作り上げる所存ですので、どうぞ五月祭当日は当企画まで足をお運びなり、「意外な発見」を見つけてくださればこの上ない幸いに存じます。





Physics Lab. 2011 代表 田屋英俊