東京大学 大学院理学系研究科・理学部

2010年度のPhysics Lab.
粉体班
液体班

■ 粉体とは?
米も粉体
身近な米も立派な粉体.

粉体とは、多くの粒が集まったもののことを言います。実は身の回りにたくさんあります。米やゴマなどがたくさん集まっていると、それも粉体です。このように身近な粉体が、予想もしなかったような多彩な振る舞いを見せます。それを究明するのが粉体物理学、そして我々の班の目的です。


■ 実験テーマ

粉体の実験には数多くの種類がありますが、現在我々が行っている実験は大きく分けて以下の4つです。いずれの実験も並行してコンピュータによるシミュレーションも行っており、実験・理論・シミュレーションの3本柱で進めています。(現在実験で用いている粉体はいずれも、直径数mm~0.1mm程度のガラスビーズです。)


①パターン形成

粉体の層を上下方向に振動させると、表面に多種多様なパターン(模様)が現れます。縞模様や四角形の格子など、鮮やかなパターンが現れます。振動の強さの変化により、縞模様の伸び縮みや、他のパターンへの遷移が見られるようになります。また、オシロンと呼ばれる孤立波(縞模様のように全体として波打つのではなく、局所的な波)の形成も確認できています。 これらのパターンや振動の強さ、用いる粉体の種類(サイズや材質)の関係を調べ、パターン形成の本質を探ることを目的としています。


パターン形成の例
パターン形成の例. 図はhttp://www.pnas.org/content/97/24/129 59.full.pdf より引用.

②粉体のマクスウェルの悪魔

いくつかの部屋に仕切られた容器内に一様に粉体を数百粒~数千粒入れておき、この容器を上下に振動させます。すると始めはどの部屋にも同じだけあった粒子がどこかの部屋に自発的に集まります。これが粉体のマクスウェルの悪魔と呼ばれる現象です。 また、集まる部屋が周期的に変化する“Granular Clock”(粉体時計)と呼ばれる現象もあり、興味は尽きません。振動の強さによりどの程度自発的に集まるかなどが変化します。我々は振動の強さや容器に入れる粒子数などを変化させて、その振る舞いを調べています。(詳しく言うと、相図を描き、臨界現象や相転移現象を探索しています。)また、単純な容器、例えば2部屋に仕切られた容器などでの実験・理論の検証と並行して、より複雑な容器(リング状の容器内に複数の部屋がある容器など)で興味深い現象が見られないか探求しています。


粉体のマクスウェルの悪魔
粉体のマクスウェルの悪魔の例. 図はK. van der Weele, Contemporary Physics, Vol. 49, No. 3. (2008), pp. 157-178. より引用.

③ブラジルナッツ現象

粉体の中に他の大きな物(例えば直径数cmなど)が埋もれているときに粉体を振動させる、中に埋もれていた物が表面に浮かび上がってくる現象があり、これをブラジルナッツ現象と言います。ご家庭でも何かの容器の中に米を入れ、その米の中にピンポン玉や丸めた紙、消しゴムなどを入れてシャカシャカ揺すってやると浮かび上がってくるのが確認できるので、ぜひやってみてください。 また、振動強度を変えると浮かび上がってきたものが今度は沈み込んでいくようになるという“リバースブラジルナッツ現象”も知られています。現在、振動強度など様々な条件を変えることでどのような異なる振る舞いが見られるか調べています。


ブラジルナッツの例
ブラジルナッツ現象の例. 図はhttp://www.csef.colostate.edu/2006_Technical_Paper_Winner.pdf より引用.

④未知現象の探索

粉体物理学はまだまだ最先端で研究されている分野であり、我々学部学生に未知の現象の発見の可能性は大いにあります。そのために、磁石で作られた粉体を用いた実験や、上記の実験においても論文に挙げられていない新たな条件下で実験を行うなど、学部生ならではの斬新な視点で新発見を目指します。



五月祭当日はこれらすべての実験を実際に生でお見せできる予定です。ぜひ、粉体に魅了されに来てください!