東京大学 大学院理学系研究科・理学部

2010年度のPhysics Lab.
液体班
液体班

■ 概要

液体班は、固体と比較して物性物理学の研究対象になる機会の少ない液体について研究し、その性質に関する理解を少しでも深める事を目標として作られた班です。液体に関する物理というと、様々なテーマが考えられますが、今回は特に班員が興味を持った二つのテーマに絞って実験を行います。


■ 実験

① イオン液体の局所構造

イオン液体はイオン性物質でありながら常温付近で液体になるという、非常に珍しい性質を持った物質です。(他にも蒸気圧の低さなどの変わった性質が数多くあります。) この物質が奇妙な性質を持つ理由を解明するために行われた多くの実験から、どうやら図のように小規模ではあるものの、分子がある程度規則的に並んでいる局所構造を持つのではないかと推測されています。



H.Hamaguchi and R.Ozawa, Adv.Chem.Phys 131, 85(2005)から引用

そこで、今回は代表的なイオン液体であるイミタゾリウム塩について、これらの局所構造の中で揃っていると考えられている回転異性体の比率をラマン分光という方法によって調べ、それが温度によってどう変化するかを観察します。この実験はレーザー光等の危険な物を使うため、申し訳ございませんが当日は実験結果と実験に使った器具の一部のみの展示とさせて頂きます。


② ケイ効果

ある種のシャンプーを板上に垂直に垂らすと写真のように、ケイ効果と呼ばれる跳ね上がる現象が確認されます。



J.M.Binder and A.J.Landig, Eur. J. Phys. 30 (2009) S115–S132から引用

これは通常の流体力学に従う液体では見られない物とされている現象の一つで、どういった性質の液体がこの現象を示すのかまだ詳しく分かっている訳ではありません。そこで、各種のシャンプーや糖蜜等の歪み速度の増加に伴う粘性の減少や、粘弾性といった性質を調べてケイ効果の発生との関係性を調べる予定でした。しかし、昨日の東北関東大震災の影響で、適切な実験器機の運用が困難になり、この予定通りに研究を進めることが難しくなりました。今、代替の研究方法を模索中です。ケイ効果の現象自体はお見せすることができますので、当日はどのような研究方法で解析が行われるか、ということも含め、楽しみにしていただければ幸いです。