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[PHYSICS LAB. 2012] プラズマ

プラズマ

我々プラズマ班は、プラズマというものが身近にありふれているということを来場者の方々に気付いていただくことを目的とし、視覚的にわかりよい実験を行いました。今回私たちが行った実験は大きく二つに分かれます。一つはプラズマボールの製作、もう一つはオーロラの作成です。双方とも自分たちでプラズマを生成し、それを実際に目で見ることができるようになっています。(文・三宅 克馬)

プラズマとは?

プラズマというのは物質の状態の名前であり、固体・液体・気体に次ぐ第4の状態であると考えられています。プラズマは原子中の原子核と電子が分離して別々に運動する状態で、気体により大きなエネルギーを与えることによって生成されます。またプラズマは電荷を持った粒子が動き回る状態ですから、電場や磁場に対して特別な振る舞いをします。

プラズマはごく身近な存在で、たとえば炎や雷、太陽などといった自然現象も、プラズマにより成り立っていると言えます。人工的なものでは蛍光灯やプラズマテレビなどにもプラズマが使われています。アーク溶接も、アーク放電という放電の一形態を利用した方法で、プラズマが関わっています。放電現象とプラズマとの関係は後で触れることにしましょう。上で述べたようにプラズマとはあくまで状態の一つなのですから、プラズマがありふれたものであることは自然であるように思えます。

ここで、気体中の放電が起きるまでのプロセスを見てみましょう。気体中に高電圧を印加すると、電極や気体原子中から電子が一つ飛び出すことがあります。この電子が高電圧で加速され、また他の気体原子にぶつかります。このとき、その気体原子からも電子が弾き飛ばされ、同様に加速され、またぶつかり、というように、電子の数はどんどん増えていきます。この現象を電子なだれといいます。この大量の電子が電荷を運ぶので、放電が起きると言うわけです。さて、ここまでの話で気付いた方もいるかもしれませんが、このとき、気体中を電子が飛び回っていることになります。そして、電子を奪われた原子核、すなわちイオンもまた混在していることでしょう。これはつまり、プラズマという状態なのです。であるからして、プラズマを生成するには、気体に高電圧を印加するというのも有効な手段の一つであることがわかるでしょう。

今回のプラズマ班の実験では、高電圧の印加によりプラズマを生成することとします。

プラズマボールの製作

プラズマボールは球体内でプラズマを生成し、電流が流れる様を可視化できる装置です。球体内を光の筋が動き、その幻想的な様からインテリアとして活用する人も多いそうです。これを製作することにより、プラズマの生成方法について学ぶことができ、また生成したプラズマを自らの目で確かめることができます。

プラズマボールは高電圧電源を必要とするので、今回はその高電圧電源の作成から始めました。まずは大電流に耐えうる交流電源を作るため、発振用ICとパワートランジスタを用いて回路を組みます。この出力を増幅するためには変圧器を用いるのですが、今回はイグニッションコイルを変圧器として利用しました。イグニッションコイルは車のエンジンを発火させるのに使うもので、空気中に放電することができるほどの高電圧を生むことができます。この放電とはすなわち上で述べたように、プラズマを生成するということであります。イグニッションコイルなら、プラズマボールの製作に利用できるほどの高電圧を出力することができそうです。しかしながら、高電圧の取り扱いは非常に危険ですので、正しく回路は動作しているのか、イグニッションコイルはきちんと増幅してくれているのか、など、低電圧を印加した状態から様々なことを確認しながら実験を進めていくことになります。

計測を重ねて高電圧での振る舞いを明らかにすることができたら、ついに放電することになります。まずはおおよそどれほどの電圧が出ているのかを確かめるために空気中で放電してみることになります。必要な電圧が出ているであろうことが確かめられたなら、次にいよいよプラズマボール本体に入力してみます。今回プラズマボールとしては、市販の電球を用いることにしました。白熱電球の内部にはアルゴンが封入されており、放電が起きやすくなっています。これは、アルゴンのイオンが他の物質と反応しにくいためで、アルゴンイオンと電子の混在したプラズマを生成するのが容易になっているのです。高電圧電源と電球をつないだら、電球中央のフィラメントに高電圧を印加して、フィラメントと周囲のガラスとの間で電流を流し、その様を見ることになります。このとき、長時間放電を続けると発生する熱に実験装置が耐えられない可能性があるので、装置の様子に注意しながら放電する必要があります。

実験がうまくいけば、電球内に細い電流の筋が見えることでしょう。手などを近付ければ、その振る舞いに変化が見られるのではないでしょうか。ただし、熱や感電の危険もあるので、触るときはくれぐれも慎重に。

オーロラの作成

オーロラの作成についてですが、まずはオーロラの基本的な原理について話しましょう。

先ほど述べたように太陽はプラズマの塊であり、そこから地球に放たれる太陽風もまたプラズマで成り立っています。プラズマは、磁力線に沿って加速されるという特性を持っています。太陽風もまた、地磁気の磁力線に沿って加速され、極付近に集まることになります。こうして加速されたプラズマの塊が大気とぶつかり発した光が、他ならぬオーロラであるというわけです。オーロラの原理はおおまかに言えばこんなものなので、必要なものを再現してやればオーロラを作成できそうです。

まずは宇宙空間、これはロータリーポンプで真空引きをしてやることによって再現します。真空にしてやることで、放電を起きやすくするのが狙いです。

次に太陽風、これは電極に高電圧を印加して電子を飛ばして太陽風とします。電源はプラズマボールとは異なり直流電源を使用します。最後に地球、これは球形の電極内に磁石を入れて地磁気も含めて作ることにします。

基本的な方針は決まったので、もう少し内容を詰めてみましょう。この実験の主題は、プラズマが磁場によって受ける影響です。プラズマは磁力線に沿って加速され、また磁力線に垂直には進むことができず跳ね返される、という二つの性質をもっています。ですから、電極に対して磁場の向きを変えてやることでプラズマの飛来する方向を制御できるかもしれません。

また、電極間の距離と気体の圧力、放電が起こる電圧の間には密接な関係があります。これらはパッシェンの法則と呼ばれるものに従っています。今、電極間の距離は実験装置の大きさで既に決まっており、電圧は高いほど放電しやすいので可能な最高電圧を印加することにしましょう。つまり、自由に変えられるのは圧力ということになります。

実はこのとき、気体の圧力は高すぎても低すぎてもいけません。電子がなるべく自由に動けるように圧力を下げて気体粒子の密度を減らすべきなのですが、あまり圧力を下げてしまうと今度は、電子なだれが起きるのに必要な原子が無くなってしまうのです。

様々な測定が終わり、電源電圧、圧力、磁力がどれくらい必要なのかがわかったら、それらの条件を満たす物をすべて揃え、いよいよ放電を行い確かめてみることにします。さて、実際にオーロラを見ることはできるのでしょうか。

さらに深く知りたい人のために

今回の実験に関してほんの少しだけ踏み込んだ話をしたいと思います。今回のプラズマ班の実験のメインテーマであるオーロラ、この項ではその原理の少し詳しい話について踏み込んでいきたいと思います。

では、太陽風が飛んでくるところから話を始めましょう。太陽は常に地球の赤道方向にあるので、太陽風は赤道側から地球に降りそそぎます。このとき、太陽風は地磁気による“磁気鏡効果”によって弾かれます。先程プラズマが磁力線に沿って加速されるという話をしましたが、それとは別の効果で、プラズマは磁力線に一定以上の角度で入射すると弾かれてしまうという性質を持ちます。これはマグネティック・モーメントが一定であるという事実から導かれることであり、そのことは、ファラデーの法則から理解できます。

とにかく、地球付近に到達した太陽風は地磁気の効果により弾かれてしまい、磁力線に沿って運動することとなります。実はこのとき、地球付近の磁力線は太陽風によって歪められ、太陽に向かって後ろ側になびいています。これを地球磁気圏というのですが、太陽風によって運ばれたプラズマはこの磁力線に沿って一度地球の後ろ側に移動し、そこで「プラズマシート」と呼ばれる領域に溜まっていきます。

このプラズマシートから、再び磁力線に沿って加速され地球の極付近に荷電粒子が降りそそぐと、粒子の衝突によってエネルギーを得て大気中の原子が励起されます。励起状態にある原子がよりエネルギーの低い状態に遷移するとき、そのエネルギー差分の光を放出するのですが、これがつまりオーロラであるというわけです。

よく見られるオーロラの緑色の発光は、酸素原子が第二励起状態から第一励起状態に遷移するときに発する光の色であるというように考えられています。今回の実験では、そこまで細かく再現することはできないと思いますが、なんとかして『これがオーロラだ』と皆さんに見せられるものを作れるように頑張りたいと思います。

主な活動メンバー

三宅 克馬班長。4年。
馬場 俊介会計係。4年。お土産の手羽先がおいしかった。最近は一般相対論を勉強している。Babapedia。特撮・懐かしアニメ・懐かし漫画等ありとあらゆる話題に対応できる。
創造神。地球を創りたもうた。他、実験器具も大概彼が創る。絵も描いちゃう。
籾山 悟至4年。アッシー君。秋葉原と後楽園に足しげく通う。あだ名はもみー。本名はさとる。F1が好き。学生フォーミュラの大会に参加するサークルに所属。プラズマ班が使うイグニッションコイルは籾山が作った(嘘)。でも、鉄を削ったり溶接したりできたりする。動画作成時にはADとして、レフ板を持って班長に光を当てるなどの活躍を見せた。
原田 了4年。あきら。AKIRA。動画係サブ。幽霊。そのうち復活したいと願っている。ギタリスト。但しクラシック限定。酒が入ると余計に黙りだすタイプ。普段は古典ギターのサークルに行っているため、実験には来ない。
物理とギターがあれば生きていける。でもチョコレートがなきゃ死ぬ。実は物理とギターは無くてもいい。持論は『チョコrレートは世界を平和にする』←噛んだ(笑)。
櫻井 祐也4年。パソコン係。グラフを描いたりする。iPadが家に届く日は実験休んじゃう。
大森 康智4年。無職。おっさん。アマゴルファー。ベストスコア86。←よくわからん。サウスポー。いつもはバドミントンばっかりしている。バ『ト』ミントンではない。物理は全くしていない。周りの協力で単位を得ている。75kg → 59kg(3か月)のダイエットに成功した。わーすごい。
早川 拓4年。管楽器をやっている。でも何だかわからない。ラッパっぽいぞ。トランペットかな。中身は見たことないからわかんないや。五月祭当日はプラズマ班のブースで原田とセッションをしてくれるだろう。
小林 雅俊4年。バレーボールの部活に入っている。見るからにスポーツマン。
新倉 広子3年。動画係メイン。重力を扱う。紅一点。宇宙に興味がある。女子会に勤しんでいて実験にはなかなか来ない。
きっとそのうちプラズマ班に大量の女子を連れてくるはず(願望)。趣味は編み物。何でも編むよ☆