PhysicsLab. 2016 BLOG
2016.03.14. Mon.
Category: BEC班
こんにちは、今回はBEC班の第2回目です。
前回は、極低温で現れる不思議な現象「BEC」について簡単に紹介しました。そこでBECが起こるのは絶対零度(これ以上下がらない限界の温度、約-273 °C)付近といいましたが、その値はなんと絶対零度から0.0000001°Cだけ上なのです! こんな低温は身の回りには存在しません。しかし、科学の発展は素晴らしいもので、そんな低温を可能にする技術があるのです。今回はそんな極低温を実現するために必要な方法の1つを紹介したいと思います。

ここでまず温度について考えてみましょう。私たちのまわりにある空気は、原子や分子という小さな粒からできていて、その粒が飛び交っています。温度はこの粒の動きの激しさを表しているといえます。つまり、温度が高いときは粒が激しく動いていて、温度を下げていくとその動きが穏やかになっていくといった具合です*1。すると、あるものの温度を下げるにはそのものの動きを遅くしてあげれば良いと考えることができます。

今、先程のような原子を冷やしたいとすると、その動きを遅くするには何かを逆方向からぶつけてあげれば良いことになります。ここで何をぶつけるかが問題となりますが、原子の冷却にはレーザー、つまり光が用いられます。このレーザーを用いた「レーザー冷却」*2は原子を極低温まで(しかも一瞬で!)冷やすことができ、BEC生成に限らず様々な方面で応用されています。

ただ、ここまでの話で疑問が湧いてくるかもしれません。どっちに動いているかも見えない原子に対しては、逆方向だけでなく動いているのと同じ方向にも光が当たって、逆に加速させてしまうのではないか?
しかし、そのようなことは光のある性質のために実は問題にならないのです! ここでは詳しくは説明しませんが、その性質は救急車のサイレンの音の高さが変わって聞こえる現象「ドップラー効果」と関係しています。光にもドップラー効果があり、光の振動数(光の色)を調整すると、動いている原子が同じ方向から来る光を受けにくくすることができるのです(つまり加速はされにくい)。

BEC班では、五月祭当日に、その光の性質を含めたレーザー冷却の原理を分かりやすく説明します。さらに、レーザー冷却で極低温まで冷やされた原子集団もお見せする予定ですので、是非お越しいただければと思います。

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*1例えば、私たちも暖かい日ほど活発になりますよね!
*2この技術に対してノーベル物理学賞が出ています。
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