そこで今年は,この宇宙線の粒子の質量を測ることで,この粒子が何という粒子かを同定することを,実験の目標としました。
■実験の内容
アインシュタインの特殊相対論では,相対論的な粒子の運動量pは,光速c,その粒子の静止質量m,速度vを用いて
と表されます。このことから,宇宙線の運動量と速度を測定することができれば,質量mを求めることができると言えます。
そこで私たちは,図のような装置をつくり,運動量と速度を測定しようと考えています。
運動量の測定
宇宙線が磁場の存在する領域(図中A)に入ると,ローレンツ力を受けて軌道が曲がります。
そこで,この磁場領域の前後に,粒子の通った位置を検出する装置であるドリフトチェンバー(図中B)を4つ置き,軌道の曲がり具合を調べます。粒子の運動量pは,軌道の回転半径r,磁場の磁束密度B,素電荷e と
という関係を持つので,軌道の曲がり具合が分かれば,そこから運動量を求めることができます。
速度の測定
速度の測定では,ある距離を粒子が通過するのに要した時間を測り,単純に距離÷時間という計算によって速度を計算します。
通った時間を測る装置は,シンチレーターと光電子増倍管と呼ばれるもので,上の図中では C(2ヶ所)で示されています。
この宇宙線粒子は,光の速さに近い速さで飛んでくるので,この時間差を測るというだけでもひと仕事です。
以上が宇宙班の行っている実験の概要です。当日は実験の説明に加え,実際に作成した装置も展示する予定です。